書評<遺伝子―親密なる人類史>

地球上の生物のセントラルドグマたる遺伝子。遺伝子はいつ発見され、その研究はどのように進んできたのか。そして、医療にはどのような影響を与えてきたのか。名著「がん‐4000年の歴史」の著者が遺伝子研究の歴史を辿る。

DNAとそこにコードされる遺伝子の研究と医学への応用はいまや各分野が先鋭化し、いわゆる「通史」たるものは意外と少ない。本書は医師である著者自身と、精神的疾患を持つ彼の家族の物語を軸にすえ、メンデルからはじまる遺伝子の発見と研究の発展を辿る。1つの謎を解けば10の謎が増える遺伝子に立ち向かう研究者たち。遺伝子解析が進みつつある中、倫理的な批判を受けながらも、果敢に遺伝子組み換えを医療に応用しようとする医師たちの物語を綴っていく。事実を淡々と積み重ねていくのではなく、あくまで医師や研究者たちを追い、彼彼女たちの個性にも触れながら歴史を辿っているので、決して無味乾燥な物語にはなっていないところが類書にない特徴であり、本書を遺伝子研究の歴史書の一級品たるものにしている。

初版2018/02 早川書房/kindle版

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F-111A Completed

静岡ホビーショー2018合同作品展にも出展させていただいたハセガワ1/72ジェネラル・ダイナミクスF-111Aアードバーク、Blogにまとめておきます。
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F-111はアメリカ空軍と海軍の新戦闘機として1960年代に開発されたVG翼の戦闘機です。アメリカ空軍初の可変翼、ターボファンエンジン搭載の戦闘機として開発され、さらに地形追随レーダー(TFR)を搭載。長距離阻止侵攻攻撃機として、突出した性能をもっています。

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ただ、新機軸を多く盛り込んだ機体ゆえ、開発は難航、価格は高価格化。焦った空軍はあわててベトナム戦争でその性能を発揮させようと派遣したのが本機、F-111Aです。しかしながら高温多湿の東南アジアの環境に苦しみ、とてもその能力を発揮出来たとはいえませんでした。F-111Aが本来の性能を発揮するのは、ベトナム戦争後期となります。

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キットはハセガワの1/72をストレート組み。TwoBobsのデカールを使用して前述したベトナム戦争初期の作戦"
Combat Lancer"参加僟を再現。大型の戦闘爆撃機らしく、スネークアイ×24発の重武装仕様に仕上げました。キットの組み立てより、スネークアイとパイロンのMERのバリ取りと固定のための金属線埋めの方が時間かかりました。
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いわゆるSEA迷彩はブラウンにイエローを混色して退色感を出し、グリーンにホワイトを指してダークグリーンと明度の差をつけています。下面はブラックなのでコーションはほぼ省略。

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サークルYDCCのテーマ<攻撃機>のための1機、ハセガワのウェポンセット4つ分のスネークアイを使っただけあって、スマートウェポン全盛の今の戦闘機にはない重厚さが出たと思います。それとVG翼はやはりイイ。
さて、次いきましょう。

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岩国基地フレンドシップデー2018に行ってきた<地上展示編>

備忘録用の岩国基地フレンドシップデーレポート、モデラー視点で地上展示機をうpしていきます。まあしかし、時間がなかった。
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まずはF-35B。垂直尾翼には岩国の名前を入れた記念塗装。「1年間運用されたステルス機の汚れ」が見てみたかったわけですが、前日に洗浄したとかで、キレイでした(泣)。せめてパイロン付きで展示してくれないもんかね。
個人的には初見のP-1。ターボファンエンジン回りのメタリック塗装がイイですねえ。P-1もいずれ、P-3Cみたいにアヤしいアンテナやフェアリングが増えていくんでしょうか。
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アメリカ海兵隊のC-130Hは、まるで筆塗り失敗したかのような雑さ。一生懸命マスキングしてるオレらモデラーの身になってくれ(笑)。

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海自のUS-1が引退し、日本唯一の飛行艇となったUS-2。海水を浴びたブルーの退色が、任務の厳しさを感じさせます。

ということで、岩国FSDレポート終了。自衛隊にも軽空母とF-35B取得がウワサされる中、岩国基地の役割は大きくなることはあっても、小さくなることはないでしょう。毎年様々なサプライズがある岩国FSD、来年の無事開催を祈念いたします。

個人メモ;
往路;05:35笹原⇒05:41博多06:08⇒06:53徳山07:22⇒南岩国08:28
復路;15:34南岩国⇒16:43徳山17:29⇒18:33博多18:48⇒笹原18:57


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岩国基地フレンドシップデー2018に行ってきた<飛行展示編>

5月5日に開催された岩国基地フレンドシップデーに行ってきました。記録用にうpします。
今年は開放ゲートが西ゲートのみで、8時半南岩国着、徒歩で向かうと、手荷物検査を通り過ぎると既に11時過ぎ。1回目のオスプレイの展示飛行は終了していました。来年もゲート開放が1か所だと、福岡日帰りは厳しいっすね。
まともに写真を撮り出したのは、民間のウイスキーパパさんの曲技飛行から。

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滑走路上を走るフェラーリとの競争なんてのもあったようですが、滑走路がはるか遠いところに陣取ったので、当然見えず。相変わらずのキレでした。
観客にとってはトイレくらいしか行けない昼休憩の後、いよいよ今年の目玉であるF-35Bの展示飛行。

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アジア初となる一般展示飛行、旋回などに激しい科目はありませんでしたが、空中静止してのお辞儀、一回転など、SVTOLならではの性能を披露。まるでヘリのような圧倒的な安定感で、時代の移り変わりを感じさせるものでした。もはやヒコーキというよりはメカですね。
そして次は室屋さんの曲技飛行。

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室屋さんの機体は陽光を受けてきらめくのがキレイだったのですが、ちょっと写真でそれを収めるのは難しかった。滑走路近くにホテルが建ったとのことで、開催が心配されたエアレース・千葉ラウンドも無事開催されるとのことで何より。
お次はお馴染み、三沢のF-16Cデモチーム。

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数々の驚きのデモを見せてきたパイロットさんが転任とのことですが、最後まで素晴らしい飛行でした。来年以降も、F-16ならではの性能を見せつけてほしいものです。

本来ならここから、アメリカ海兵隊の空中給油でもなどの展示飛行本番なのですが、混雑を避けるため早めに基地から離脱。アイポン上ではこの日の歩行距離が20㎞と、改めて岩国基地の広大さを知ることが出来たのでした。オレらミリオタは好きだからいいが、家族で来る人たちは正直すごい、と思います。
続きは<地上展示機編>にて。


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相浦駐屯地記念行事2018に行ってきた

連休初日に陸自大改編の目玉の1つ、水陸機動団が新設された、相浦駐屯地記念行事に行ってきました。西普連が改変され、AAV-7水陸両用兵員輸送機など装備。
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AAV-7もさることながら、上陸地点に先行侵入して障害物を開設する施設部隊など、個人装備も興味深いっすね。しかしながら、ダットサイト付きの89式小銃とか、マニアが見たい装備は見せてくれなかった印象。
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戦闘展示はF-2の模擬爆撃のあと、ヘリボーン。チヌークからのラぺリングは初めて見たかも。逆光が残念。
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注目のAAV-7の展開はリアリティを追求したのか、かなり煙幕張ったので見えにくい登場(笑)。増加装甲つけたのが見たかった。
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AAV-7から地雷源開設部隊や迫撃砲担当の特科部隊が下車、このシーンを撮りに行ったといっても過言ではない。
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最後は普通科が敵陣に突入して状況終了。水陸機動団だけで戦闘にのぞむことはなく、諸職種(陸海空統合のこと)、諸兵科合同で戦うとのアナウンスでしたが、配下にあるのが迫撃砲各種なのは、いかにも火力不足ですね。発足したばかりの部隊ですが、もっともっと予算と支援が必要ですね。

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ま、なんです、統合作戦の見本みたいな水陸機動団を見学させてもらって一番感じたのは、航空自衛隊さんにもっと地上支援をまじめに考えてほしいってことです。海自さんも艦載砲の口径上げたけど、艦砲射撃の訓練してる?ってことも。
水陸機動団にハダカで戦闘させちゃいけません。

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北熊本駐屯地記念行事2018に行ってきた

陸自第8師団が駐屯する、北熊本駐屯地記念行事に行ってきた。
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第8師団は特科、戦車部隊を改編し、広域に対応する第8機動師団に生まれ変わったばかり。火力支援部隊が74式戦車から16式機動戦闘車に装備更新したのは、その象徴です。
展示車両は、その16式機動戦闘車のほか、対空、対戦車(舟艇)、対艦ミサイル車輛が勢揃い。どこの誰にアピールしているのかは知りませんが(笑)。
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展示車輛を撮影した後、観閲行進および訓練展示の撮影ポイントに移動。さすが自衛隊隊員の産地、熊本県。来賓挨拶は両院議員から県知事まで勢揃い。
しばし来賓祝辞を聞いた後、観閲行進。機動戦闘車、複数いるとさすがに迫力。
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訓練展示はせまいながら、島嶼防衛を模して充実メニュー。偵察部隊がゲリラを拘束して、普通科と火力支援部隊が後続の敵部隊を制圧するというメニュー。ドローンを戦場監視に使ってるのは初めて見るかも。
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これは詳しい人なら誰でも思ってることでしょうが、防御能力、バリエーション展開が低い96式WPCの後継をなんとかしないと、カッコイイ16式機動戦闘車も、宝の持ち腐れなんですよねえ...
課題は山積みの機動師団の改編、行く先を見守りましょう。


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書評<戦争の日本中世史―「下剋上」は本当にあったのか―>

手柄より死を恐れ、領土の安堵を求めた武士たち。悪人ばかりではなかった「悪党」。戦争大好きな朝廷の公家たち。戦時立法だった一揆契状など、南北朝以後の本当の日本の戦争の姿を、固定された歴史観から解放し問い直す。

太平洋戦争以後の近代史以後の知識しかないので、大河ドラマ視聴を中心に日本の中世を勉強し直しているが(笑)、その中でも呉座氏の著書は面白く、かつ信頼できると思っている。本書は著者の歴史解説書の中でも、南北朝以後の戦争の実態を一次資料を見直しながら検討し直したものである。
著者がたびたび指摘するのは、下剋上に代表される、2次大戦後の日本史研究の固定化された歴史観だ。社会主義、共産主義の理想が歴史の解釈に入り込んできた時代ゆえ、「ゲリラ戦で荘園の武士を打ち倒す」「戦争におたおたする公家さん」といった歴史解釈がなされたというのだ。著者は複数の資料を突き合わせ、その資料が書かれた年代と背景を検討し直すという作業のうえで、中世の戦争の実態を描き出すことに成功している。武士は悩み、公家は武力を行使し、僧侶も土地を支配する。教科書で習った浅い知識しかない自分には、目からウロコが落ちる解釈である。
それには著者の個性も必要だったと思われる。「野戦でゲリラが正規軍にかなうわけない」といった近代の戦争の知識も本書には必要だったのだと思う。戦争を忌避する学者に、500年以上前とはいえ歴史は語れない。ミリオタにとっても、抜群に面白い本だ。


初版2014/01 新潮社/新潮新書(kindle版)

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書評<激震! セクハラ帝国アメリカ 言霊USA2018 USA語録>

アメリカ在住の映画評論家である著者による、アメリカの現在を綴るコラム集。今回はトランプ大統領の”ご乱心”っと"me too"と呼ばれるセクハラ騒動がメイン。断片的に伝えられる"me too"運動の実態をユーモアを交えて綴っていく。

ハリウッド作の映画評論家で、リベラルな政治姿勢で知られる著者が、彼にも馴染みのあるハリウッド関係者のスキャンダルをどう斬るのか?それに興味があったのだが、結論からいうと事実の羅列に過ぎなくて、著者にしては毒が足りない気がするのだ。日本の古く時代遅れな社会を見下し、アメリカのリベラル勢力を上げるのが著者の基本姿勢だが、そのリベラルの象徴の一つであるハリウッドがヘタしたら日本社会よりヒドイ男尊女卑だったのだから、まあ筆も鈍るというものなのだろう。保守からリベラルへ移行していったはずのアメリカが、その内実に対立を抱えたまま、息が詰まるようなポリティカルコレクトネスが支配する社会と化している現実。そのことを本書も象徴しているのかも知れない。

初版2018/03 文藝春秋/kindle版

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書評<炎と怒り トランプ政権の内幕>

アメリカ大手メディアの予測を覆して選挙に勝利し、アメリカ合衆国大統領に就任したドナルド・トランプ。政治家としての経験がないトランプ大統領とその側近、ワシントンの常識を覆すことこそが自分の仕事だと承知しているトランプ大統領の発言と行動が、世界を混沌とさせている。その意思決定の現場であるホワイトハウスの中はどのような状態に陥っているのか?内部告発を巧みに組み立て、トランプ大統領就任後1年を暴いた問題作。

本書により、トランプ大統領は辞任に追い込まれるといわれたものである。それゆえ、早川書房としても異例の速攻翻訳・発売であったはずなのに、トランプ大統領の行動はもっと早い。本書に登場するトランプ大統領選出の官僚たちはほとんどいなくなったと言っても過言ではないし、外交や貿易政策もガンガンと新しい手を打ってくるので、本書に書かれていることなど、もはや過去の一場面に過ぎない。
一応本書に触れておくと、メインはバノン氏をはじめとしてオルタナティブ右派勢力と、ジャーヴィンカと呼ばれるトランプ大統領の娘と娘婿夫婦の派閥争いである。とにかく歴代の民主党選出大統領が打ち出した政策やグローバリズムの否定に快感を覚えるバノンと、割と穏健で常識的な方向に持っていきたいイヴァンカ夫婦の間で政策が翻弄される様は滑稽ですらある。4月中旬現在でバノンは退場したが、今度は強硬な右派、ボルトン氏が安全保障担当補佐官に就任し、またもや外交が見通せなくなった。世界の首脳は、少なくとももう3年はトランプ大統領に振り回される日々が続くだろう。


初版2018/02 早川書房/kindle版

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書評<ダ・フォース>

ニューヨークのマンハッタン・ノースと呼ばれる街の犯罪、すなわち麻薬、殺人、窃盗などを統合的に取り締まる特捜部、”ダ・フォース”。犯罪多発地域で、タフで優秀な警官たちを率いるデニー・マローンはこの街を統べる刑事の王であるが、悪徳警官でもあった。危ない橋をうまく渡ってきたはずのマローンは、ニューヨーク市当局とFBIの罠に嵌まり、破滅の道を歩み始める。

街の麻薬ディーラーやマフィアたちを相手にリベートを受け取るという悪徳と、「自分の街を守る」という使命感と正義の両立。危ういバランスを自らの中に保ちながら、犯罪を取り締まるマローンという存在を通してみる、ニューヨークのダウンタウン。麻薬の蔓延や人種差別などをリアルに描きながら、警官は、街とは何かを問う警官と犯罪の物語は読者を圧倒する。そして、華やかな世界有数の都市であるニューヨークの裏の顔の圧倒的なリアル。現場の警察と市当局の乖離、市当局と連邦政府の対立など権力を争うエリートたちの薄汚さに比べれば、マローンは確かに街の王である。ページをめくる手が止まらない物語とは、この物語のことをいうのであろう。


初版2018/03 ハーパーコリンズ・ジャパン/Kindle版

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