書評<フェラーリ メカニカル バイブル>

スーパーカーの象徴たるべき存在であるフェラーリの各車。車両本体も高価であるが、そのパーツや修理代金も高価であることでも知られる。それは信頼性の低さと裏返しということでもある。果たしてその実際はどうなのか?オールドフェラーリから最新のフェラーリ、そしてスペチアーレと呼ばれるサーキット専用仕様まで、あらゆるフェラーリを整備してきた著者が、フェラーリというクルマの実態と魅力を解説する。

とかく前述したイメージだけが先行するフェラーリだが、オーナーでなければ、メカニックでなければ分からない実際の姿を豊富な写真の詳細な解説で紹介する本である。路上最高のスピードを実現するため、ギリギリの設計を追求したフェラーリは機械として魅力的であり、その外観もどの時代のフェラーリをとってもエキゾチックだ。だが、攻めた設計ゆえ、また日本という高温多湿で機械にとって最悪な環境だけに頻発する故障も多く、そのことがフェラーリに対する評判が分かれる所以となっている。またフェラーリはデザインが古くならないゆえに旧車としてみてもらえず、例えば電気系統の経年劣化がフェラーリの印象を悪くしている実態を本書は伝えている。どのページをめくっても、メカニックゆえに分かる細かい指摘でいっぱいだ。批判するだけではなく、褒めたたえるだけでもない、メカとしてのフェラーリの素晴らしさと実際を伝える良書である。

初版2017/07 講談社/大判本(変形)

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書評<凶鳥〈フッケバイン〉 ヒトラー最終指令>

ヒトラー率いる第三帝国の崩壊が迫りつつあるドイツの片田舎に、謎の飛行物体が墜落する。ヒトラーは、その謎の物体を凶鳥<フッケバイン>と呼称し、武装親衛隊を経由してドイツ国防軍に物体の回収命令を出す。その正体を知ってかしらずか、アメリカの特殊部隊員やロシアの機甲部隊も呼び寄せていた。いち早く到着したドイツ軍将校は、異常な状況と敵に出くわす。

急逝した佐藤大輔御大の有名な短編の1つ。いわばUFOとゾンビものの短編だが、そこは仮想戦記で名を残した著者の作品なので、ドイツ将校の活躍を描いた英雄譚となっている。男の中の男、戦士の中の戦士、将校の中の将校。まさにミリオタが憧れる国防軍の将校の姿そのものであり、その戦闘シーンもまったく抜かりない。作品世界に一気に入り、読み切ってしまう作品であった。

初版2000/03 角川書店/Kindle本

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書評<トラクターの世界史 - 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち>

人類が農耕を始めてから長い間、「土を耕す」という行為は人力や家畜の力で、鋤や鍬といった農機具を用いたものであった。しかし、蒸気機関と内燃機関の発達が「トラクター」という車輛の登場を促す。それはアメリカにおいては開拓地の発展の象徴であり、旧ソ連においては農民たちの団結の象徴ともなった。農業の歴史を変え、世界を変えたトラクターの登場と発展を、世界史を俯瞰しながら描き出す。

「トラクターがこれほど世界を変えたとは!」という驚きが読み終えた後の感想である。瀬戸内のミカン畑以外は農業と関わることがなかったので、土を耕すことの重要性、そしてそれがいかに過酷な労働であったかを知らなかったことはもちろんだし、それをトラクターが変えたことももちろん知らなかった。そして、トラクターの世界的普及もまた、乗用車と同じくフォードが成し遂げた事業であったのも意外だ。やがて、ヤンマーやクボタといった日本メーカーが世界市場を席巻していく戦後史も、自動車産業の発展と重なる。
トラクターを通して農耕の近代史のみならず、イデオロギーの象徴とされたことなど多面的に歴史を知ることが出来る素晴らしい本である。

初版2017/09 中央公論新社/中央公論新書

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書評<フォルクスワーゲンの闇>

自動車の排ガス規制に関する公的テスト実施時のみ、排ガスの有害物質が激減する「ディフィート・デバイス」を用いたとして、世界的なスキャンダルとなったフォルクスワーゲンの「ディーゼル・ゲート」事件。公正なイメージが強いドイツのトップメーカーのスキャンダルは業界を揺さぶり、乗用車用のディーゼルエンジンのイメージを致命的に悪化させた。このスキャンダルはなぜ起こったのか?戦前からのフォルクスワーゲンの会社の成り立ちと創業者一族の思惑を軸に、巨大企業の闇を暴き出す。

フォルクスワーゲンとポルシェ。その立ち位置は独特だ。世界的なドイツの自動車メーカー2社とその創業者一族は、ナチス・ドイツに協力していたメーカーだったが、その複雑な株式と提携関係も温存されたまま、2次大戦後に発展を遂げた。また、州政府も株式を保有し、役員会での発言権を維持する。ドイツでは労働者が保護されるため、社員解雇などリストラが難しい。こうした状況が、メーカーとして無理やりにでも拡大発展していくしかない経営方針を選択させることとなる。その企業規模拡大の武器が、北米進出であり、クリーンディーゼルエンジンであった。本書はこうした経緯に至るまでを、丁寧に描き出し、スキャンダルの裏側を暴き出すことに成功している。日本ではあまり報道されることがなかったが、フォルクスワーゲンはもともとスキャンダルを繰り返している会社であること、良くも悪くも労働組合をバックにつけた創業者一族の独裁体制であることが明かされている。その姿は、この日本でのブランドイメージとはかけ離れたものだ。
日本では盲目的にドイツ車を礼賛する傾向がみられるが、ディーゼルゲートの後の急速な電動化推進、中国市場での拡売策など、政治的な動きを背景にしたドイツ車メーカーの動きは胡散臭いところも多い。ドイツびいきの自動車評論家や経済評論家こそ、本書を読んでほしい。


初版2017/07 日経BP社/Kindle本

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書評<図解入門 最新 ミサイルがよ~くわかる本>

ミサイルのどのような構造をしていて、どのような誘導方式や発射方式があるのか?ミリオタでも知ってるようで理解していない、現代兵器の象徴である各種ミサイルのベーシックな知識を、分かりやすく解説するミサイル入門。

北朝鮮が次々と弾道ミサイルを打ち上げる昨今、プライムタイムのニュース番組に「ロフテッド軌道」などというマニアックな言葉が飛び交う時代。だが、毎月「軍事研究」を愛読するミリオタたちも、意外と基本的な知識を質問されると、答えが出てこないものだ。本書は空、艦、陸と様々なプラットフォームから発射される各種の誘導ミサイルの基本的な知識を図解で解説するものである。著者は現代兵器解説の第一人者であり、そこにはマニアックな知識も盛り込まれる。入門といいながら、ミリオタにも復習になり、ためになる本だ。

初版2017/07 秀和システム/ソフトカバー

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書評<だまされないための「韓国」 あの国を理解する「困難」と「重み」>

違う国、民族なので当たり前なのだが、韓国国民のメンタリティーは、とにかく分かりにくい。ゆえに彼らを蛇蝎のごとく嫌い、ヘイトスピーチを繰り返す輩は絶えないし、一般ピープルの好感度も下がるばかりだ。そのメンタリティーの根源はどのような価値観の下、形成されているのか。前大統領の朴槿恵を巡る崔順実ゲート事件で、韓国国民はなぜあれほど盛り上がり、司法と議会はなぜ弾劾という判断を下したのか?気鋭の韓国学者である著者二人が対談形式で、それを解説していく。

例えば韓国の国民はなぜ、あれほど歴史にこだわり、もはや偽史と言われても仕方のない”物語”を作り出すのか?著者たちは殻国国民が事実ではなく「あるべきだった歴史」を構築し、それを「事実」として振る舞うことを指摘する。日本と「共通の歴史認識」を探そうとしても、すれ違いばかりで終わるわけだ。本書はこういった隣国の国民、あるいは政府や司法とのすれ違いを解説していく。それは論理的であり、しごく納得のいくものだ。そうしたすれ違いをきちんと確認したうえでの外交交渉、あるいは民間交流をなすべきなのに、一部で過剰に隣国意識や贖罪意識をもつ日本人がいるので、話がどんどん複雑になっていくのだ。本書はドライに、また客観的に隣国との外交関係あるいは距離感を見つめた本であり、ネットで見かける「おかしな韓国のお話」に過剰反応するのが馬鹿らしくなる本でもある。


初版2017/05 講談社/ソフトカバー

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書評<ザ・カルテル>

メキシコは最大の麻薬消費地であるアメリカと国境を接しており、中米の麻薬生産国との中継点の役割を果たす。ゆえに、そこには違法で巨大な利益が発生し、それを巡ってカルテルと呼ばれる麻薬商人たちが縄張り争いを繰り返し、メキシコ各地を殺戮の場としていた。DEA捜査官アート・ケラーは麻薬マフィアの大親分に200万ドルの賞金をかけられながら、メキシコ当局と協力し、カルテルの幹部たちの逮捕に奔走していた。本書は、警察など歯牙にもかけない暴力をふるう麻薬マフィアたちとの30年戦争の物語である。

本書は麻薬を巡る、圧倒的な暴力と殺人の物語である。もちろんフィクションだが、麻薬商人、取り締まり当局、ジャーナリスト、貧民などが直面する殺戮がフィクションではないことは、冒頭で4ページに渡ってメキシコで殺されたジャーナリストたちへの弔辞が証明している。もはやアフリカや中東での紛争、テロに匹敵する残酷な暴力と殺人が、新興の経済国としても知られるメキシコで繰り広げられているのだ。
本書はまた、麻薬を巡る30年に渡る戦争の歴史書でもある。エスカレートする暴力に対抗するため、武装は限りなく軍隊に近づき、逮捕ではなく暗殺が優先される。9.11同時多発テロをはさみ、アメリカが変貌していく様も描かれる。巨大な富を巡る駆け引きと、殺人、そしてわずかな光明。残酷で、鮮烈な描写で、読者に読むのを止めさせない、圧倒的な物語だ。

初版2016/07 角川書店/角川文庫

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F-16C"DARK VIPERS" Completed

タミヤ1/72F-16C"DARK VIPERS" 完成しました。
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F-16Cは数的にはアメリカ空軍の主力機であり、全米各州のANGにも多くの機体が配備されています。長い間、カウンターシェイドの制空迷彩をまとってきたヴァイパーですが、近年、低観測性に配慮した”HAVE GLASS Ⅴ”と呼ばれる塗装の導入が始まりました。
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前作に引き続き、タミヤの1/72のキットに関しては、まったくのストレート組み。コクピット前のIFFアンテナがないタイプのパーツを使用し、Block40仕様にして、スナイパーXRポッドを装備させています。
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今回の製作のテーマは、モデルカステンの新商品、ステルスグレー(1)の人身御供(笑)になること。ダークグレーにメタリックが配合されており、現用機モデラーが試行錯誤しているステルス機用の塗料です。非常にキラキラ感が強く、光の具合によっては虹色に輝きます。個人的には少し派手な感じがするので、エナメルのフラットブラックでウォッシングした後、仕上げはクレオスのフラットを吹いて落ち着かせています。
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デカールはCaracalModelsの”DARK VIPERS"を使用。サウスダコタANGの機体を再現しています。航空ファンやウェブの小さな写真しか資料がないため、また汚れ具合が分からず、ウェザリング表現はなし。このへんはF-35含めて、長期間使用した後の写真待ちですね。
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光の当たり具合によって見え方が大きく変わるこの種のメタリック塗装の再現は相変わらず難しい。この新商品も「これ吹いとけば大丈夫」って感じでもなく、好みによって工夫が必要ですね。とはいえ、自家調色では出せないメタリック感はさすがにメーカーさんなので、F-22用のゴーストグレーの発売にも期待です。
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書評<機龍警察 狼眼殺手>

量子通信を新たな通信インフラとして構築する巨大プロジェクト「クイアコン」。日本と中国の巨大企業と官僚がプロジェクトに絡み、甘い汁を吸おうとする輩が群がっていた。その疑獄を追求する捜査二課は、セクションの壁とプライドを捨てて、合同捜査を特捜部に持ち込む。合同捜査に着手した特捜部だが、次々と関係者が暗殺されていく。残されていたのは、カトリックの聖人のカード。浮かび上がってきたのは、アイルランドのテロリスト集団の中でももっとも凶悪な暗殺者だった。特捜部は疑獄と彼女に対し、どのように立ち向かうのか?”真の敵”が姿を現しつつあるシリーズ、第5弾。

量子通信でパワードスーツと搭乗員の脊髄を繋ぎ、脅威の機動性を発揮する兵器、通称”キモノ”。SFの要素と警察小説の要素が絡み合い、抜群の面白さを誇る<機龍警察>シリーズ。本作も面白い、面白いのだが、まるっきり警察小説であり、テロリスト狩りの物語である。いわゆる経済犯罪の地道な捜査と、テロリストとの追撃戦がメインであり、”キモノ”はまったくといっていいほど登場しない(笑)。”キモノ”はもちろん重要なテーマで、物語の根幹なのだが、ガジェットの1つになりつつある。次作は”キモノ”の活躍にも期待。

初版2017/09   早川書房/ハードカバー

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書評<人類はなぜ肉食をやめられないのか>


我々人類は”雑食”であり、肉も野菜も食べるが、250万年前の祖先たちは狩猟採集を中心とした生活を営んでいた。にも関わらず、肉食は現代に生きる人類にとって最大の楽しみであり、栄養源となっている。いわゆるベジタリアンの人々もいるが、その割合は欧米で約3%であり、圧倒的な少数派である。人類はその摂取量が過剰になって健康を害するまでになっても、肉食をやめられない。本書はその理由を歴史、栄養学、宗教や畜産業まで広く探り、解き明かしていく。

ベジタリアン、あるいはビーガンと呼ばれる菜食主義者の食事にも、大豆などを原料とするいわゆる”疑似肉”が登場する。宗教、健康、タブーなど様々な理由で肉を忌避する人々さえ、肉に対する愛を止められない。それが著者が本書を執筆する原点となる。人類が今の人類になるために、カロリーとタンパク質が豊富な肉は欠かせなかった。本書は肉食を人類が愛する理由を歴史から産業まで広げ、解説していく。現在ではその摂取量は少なくとも先進国では過剰であり、肉食を減らす時代にきているというのが著者の結論だ。それでなくても発展途上国の肉の摂取量が拡大して肉の価格は上がり、大量飼育される家畜は地球温暖化の原因ともなる。
しかしながら、即製飼育される豚・牛・鶏と同じカロリーを取ろうとすれば、野菜各種を大量に摂取せねばならず、ベジタリアンの生活は逆にコストがかかることとなる。世界の格差が広がる今、欧米のビーガン生活は金持ちの趣味となりつつある。著者にそのことを問うてみたい。

初版2017/06 インターシフト/ソフトカバー

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