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書評<ストライク・アンド・タクティカルマガジンvol.1>

ストライク・アンド・タクティカル・マガジンvol.1

現在、ガン関係のミリタリー雑誌は主に3誌。「月間GUN」はかたくなに”GUN”そのもののメカニックを詳細に分析し、もはや半端な知識ではついていけない孤高の雑誌だ。大いなるマンネリというべきかも知れないが。「コンバットマガジン」は銃器そのものよりもコンバット・ユニフォームその他も特集し、、総合的な”軍装趣味”というべきスタイルだ。「アームズ・マガジン」は最近リニューアルし、サバイバルゲーム関係の総合誌になった。表紙がアイドル(AV女優なども起用)というのはちょっと引っかかるが。
そこに割って入るのがストライク・アンド・タクティカル・マガジンである。テーマはガンマニアの憧れ、「特殊部隊」である。前に上げた雑誌でも何度となく取り上げられてきた特殊部隊。特に冷戦終結後の特殊部隊への注目度がアップしたことから、そのオイシイところを抜き出した感じだ。特殊部隊の戦術、使用武器などを紹介。創刊号はオーストラリアの特殊部隊、SASRが巻頭特集でその恐ろしげな姿を晒している。それにトイガン関係の記事を加えた主な紙面構成だ。はっきりいって、そんなに新しいところはない。リニューアルするもっと前の「アームズ・マガジン」が似たような構成だったと思う。案の定、編集人は「某誌からの異動」らしい。
「GUN」や「コンバットマガジン」では硬派すぎるし、「アームズ・マガジン」はもうほっとけ、というミーハーな(中途半端な)マニアが読む、というポジションか。個人的には軍隊よりも情報の少ない警察関係の記事をピックアップしてほしい。とにかく1号限りにならないように祈る。

初版2003/12 大日本絵画/雑誌

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書評<できるかなV3>

できるかなV3
西原 理恵子
週間SPA!連載の、”西原先生、ムチャに挑戦”シリーズ最新刊のメインは”脱税”である。あるいは税務署との戦いというべきか。西原先生、権威あるレストランに反抗するなど、様々な権力に立ち向かってきたが、今回は最後の壁ともいえる国家権力が相手である。自らの収入と経費をほぼ明かした上で、「マンションは遺産で買った」「私はゴーストライターで原稿は他に頼んでいる」などなど、税務署にとことんデタラメな方法で対抗する様が描かれる。どこまでギャグか分からないが。その他、老舗のスナックでキャバレーに挑戦し、ギャグかと思いきゃ泣かせるラストなど、西原先生はまだまだ元気だ。最新のインタビューを読むとどうやら離婚したようであるが、それもまた西原流のギャグでマンガにし、笑い飛ばしてほしいものである。

初版2003/12 小学館/コミック(変形版) 

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書評<池袋ウエストゲートパークⅣ>

池袋ウエストゲートパークⅣ
石田衣良
TVドラマでも話題になった、池袋の不良少年たちを鮮烈に描くシリーズの4作目で、本作は短編が3作収録されている。主人公は年を重ねていき、もはや不良少年たちの物語というよりも、池袋の探偵あるいはトラブルバスターの物語といった方がいいと感じにシリーズが変化しつつあるようだ。本作にしても、池袋のラーメン戦争や、ネットの裏世界で流通する人体損壊DVDなどテーマは時代を切り取ってはいるが、初期の作品のような鮮烈さはない。
それと、本作では「泣き」の要素が多くなっているのも特徴。ネグレクトの少女、あるいは重大な秘密を抱えたままの元不良少女など、主人公は人助けに奔走し、結末は必ず主人公が泣く。殺伐とした後味の悪い結末が初期の作品にはあったはずだが、それが薄れつつあるのだ。もちろん、主人公の成長を意識したものだと思うのだが。
総じて短編で読みやすい本だ.。だけどハードカバーで¥1000以上出す価値があるかといえば迷う。時代を反映した話なので文庫になるのを待ってると遅い感じがするし。良作であるのは間違いないのだが。

初版2003/11 文藝春秋/ハードカバー

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書評<現代サッカー様式学入門>

現代サッカー様式学入門
現代様式学会
何のことか分からないタイトルだが、サッカーをネタに遊びましょう、というお笑い本。2002年のワールドカップをはさんで某サイトにて連載されたものを一冊の本にまとめたものである。ウェブ上の連載物なのでビジュアル的なものも多く、見て読んで素直に楽しんでほしい。前日本代表トルシエ監督の語録といったオーソドックスなものから、ワールドカップ前後に日本代表のレプリカを着た人がちまたにあふれたのを受けて、「あらゆる生物用の日本代表レプリカを考える」といったしょーもないネタまで詰め込んである。自分が好きなのは解説者の口ぐせ、あるいは名言を集めたもの。このネタのために本を1冊買ったようなものである。
よく考えると、よくよくサッカーの情報を拾ってないと、あまり笑いが分からないものもある。ネットであらゆる情報が巡る世界の上に笑いが成り立っている。そう考えると深い・・・かな?

初版2003/10 三才ブックス/ソフトカバー

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書評<「アニメ評論家」宣言>

「アニメ評論家」宣言
藤津亮太
自分がアニメの”監督”を意識するようになったのは押井守監督作品「機動警察パトレイバーTheMovie2」(以下P2)だった。アニメはたいていは架空の世界を描いているから、その世界観の構築が重要だし、そこから外れるとドラマは無残に崩れる。「パトレイバー」の場合、「TheMovie1」とテレビ・マンガ版は現実に近い世界と、概して明るいキャラクターが設定されていた。だがP2はその構築された世界観のなかで、まったく毛色の違うキャラクターを登場させ、重厚なドラマを展開させる。P2を見たときの衝撃とそこから放たれるメッセージにヤラれた自分は、オタク業界でいうところの「押井守原理主義者」になった。
かように、アニメにはキャラクターやメカももちろん魅力があるが、”フィルム”として語りたくなる作品がたくさんある。本書は多くのアニメ評論を展開し、アニメーション評論文コンテスト最優秀賞を受賞した著者が、古今のアニメについて、フィルムから読み取れるメッセージを解説してくれる。押井守や宮崎駿などの有名どころから、オタクしか知らないアニメまで、深読みしすぎじゃないかというぐらいの評論を展開する。自分と同じメッセージを受け取っていたのか、という評論もあるし、目からうろこが落ちる評論もある。アニメを見る目が新鮮になること請け合いの1冊である。

初版2003/11 扶桑社/ソフトカバー

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書評<コンコルド・プロジェクト>

コンコルド・プロジェクト Concorde The Inside Story 
ブライアン・トラブショー Brian Trubshaw
2003年は航空100周年、すなわちライト兄弟が動力飛行に成功してから100年のメモリアル・イヤーである。そのメモリアル・イヤーである今年、夢の旅客機である超音速旅客機(SST)コンコルドが運行を停止した。本書はそのコンコルドの開発と試験、そして運用の歴史を辿ったノンフィクションである。
コンコルドは、航空機がスピードを追い求めていた1960年代初期に、フランスとイギリスの共同開発プロジェクトとして産声を上げた。超音速で巡航し、なおかつ安全な旅客運送を実現するためには、高い技術的ハードルがいくつも存在した。それを突破するには多大な資金がいる。ヨーロッパの航空大国であるイギリスとフランスの航空産業は、この頃すでにアメリカのそれに押され始めており、単独ではとてもSSTは開発できない。イギリスとフランスは国際共同開発プロジェクトを選んだ。それは文化や言語が違う国が協力し技術的開発を行うことであり、当然のことながら多大な困難が伴う。著者はコンコルドのイギリス側テスト・パイロットとしてプロジェクトに参加し、その立場から本書をまとめている。国際共同開発なる理想的な響きが、逆にいかに困難さを示すかが克明に描かれている。
コンコルドの不幸は、開発中に旅客機に対する要求が速度よりも、経済効率や環境問題に変化してきたことである。ソニック・ブームを起こしながら高空をマッハ2で飛行して、アフターバーナーを炊いて離陸するコンコルドはおせじにも環境にやさしいとはいえない。そのおかげで大金をかけて開発、初飛行した後も全世界で延々と試験が続き、その間にどんどん発注がキャンセルされ、結局は量産機が20機に満たない結果にプロジェクトは終わったのである。
本書にはSSTの未来も示されているが、世界の航空業界が不況とテロに喘ぐ今、その将来は暗い。航空業界に、SSTなみの革命は将来、起きるのだろうか。
ところで、本書の欠点は技術的な用語の解説・説明がなさすぎることである。例えば「コンプレッサー・サージング」と文章中に出てくるが、その意味が解説なしに分かる人は少ないと思う。「国際共同開発の困難さ」という一般的な読者にも訴えるテーマなのに、専門用語のせいでこの本が読まれないのはあまりにもったいない。

初版/2001/07 原書房/ハードカバー

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書評<トレイル・オブ・ティアズ>

トレイル・オブ・ティアズ The Trail of Tears
A.J.クィネル A.J.Quinnell
クローンによるコピー人間が今一つリアリィティを持たないのは、クローンの元の人間と育った環境や教育を同一には絶対にできないからだ。しかし、記憶をまるごと移植できるならば話は別だ。
情念の作家、クィネルの最新作はそのクローン技術をメインプロットに持ってきた。主人公は世界的な脳外科医ジェイソン。その彼が誘拐されるところから物語が始まる。ジェイソンは政府の秘密研究所で極秘に育てられている少年の脳外科手術を施すために誘拐されたのだ。その少年こそがクローン人間だった。自殺に偽装されたジェイソンの誘拐だったが、彼の別れた妻、リサはそれを信じず、彼女に協力する警官とともに彼を探し始める。それとは別に、ドッグショーで犬のクローンの疑いを持った獣医がその謎を追い始め、やがて秘密研究所に行き当たる。物語はテキサスのその施設に収束し始める・・・。
粋なバーテンダー、「行動支援応答」なる特殊班の男などなど、脇役までニヤリとされられる個性を造り込むクィネルの手法は健在。ただ肝心のメインの登場人物たちの魅力がイマイチ。主人公ジェイソンもその妻リサについても、初期のクィネル作品のような深い心理描写がないので、あまり感情移入できない。その分、読みやすいのも確かなのだが。慎重に張り巡らされた伏線など、物語の組み立ても確かなのだが、メインプロットである記憶の移植の説明が今一つ足りず、全体的には消化不良な感じだ。
初期のクィネル作品は人物描写が深い分、物語としてはベタベタともいえる。だがそんなクィネル作品を期待しているのは自分だけではないと思う。次回作に期待。

初版2000/05 集英社/ハードカバー

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書評<プレイグランド>

プレイグランド  THE PLAY GROUND
トーマス・サンダース  Thomas Sanders
東西冷戦華やかしころの諜報機関の活動といえば、どうしても東側のそれが悪役となる。旧東ドイツの秘密警察、シュタージなどはよく知られるところだ。一般市民の監視や亡命者への迫害、さらには暗殺まで、その悪名はエスピオナージでもお馴染みだ。
では、旧西ドイツはどうだったか?憲法擁護庁など諜報機関の存在は知られているが、少なくとも攻性の組織はこれまで知られていない。本書はこれまで知られることのなかった旧西ドイツによる、旧東ドイツへのテロなどの工作行動の一端を明らかにしている。
本書では、組織にスカウトされて訓練を受けた1人の男を主人公として、旧東ドイツへ侵入しての破壊工作や、亡命者の保護などを行う様が克明に描いている。主人公が組織の仲間に絶対の信頼をおき、引き換えに家庭を壊してしまいながらも任務を遂行していく物語は、あまたの特殊部隊を舞台とした小説に見られる。しかし、彼がドイツ人であることを常に意識して読んでいれば、冷戦時代においては米ソの軍拡競争、第3世界での代理戦争だけではなく、東西両ドイツにおいても”戦争”が行われていたことを改めて認識させられる。ミリタリーマニアとしては、同じ敗戦国でありながら強固な軍事力を再組織、維持してきた西ドイツの軍に「実戦ではとても戦えない」といったような空気が漂っていたということが意外だった。自衛隊とは違う、とずっと思っていたのだが。
ところで、本書はノンフィクションではあるが、著者がその経歴を明かしていないため、その真贋が本国、あるいは先に出版された欧米でも論議されている。ドイツが統合されてもなお、著者が経歴を明らかにできない状況があるならば、それは本書がノンフィクションである証明といえるのではないか。民主主義政府といえども、権力は権力である。

初版2003/11 小学館/ハードカバー

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