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書評<プレイグランド>

プレイグランド  THE PLAY GROUND
トーマス・サンダース  Thomas Sanders
東西冷戦華やかしころの諜報機関の活動といえば、どうしても東側のそれが悪役となる。旧東ドイツの秘密警察、シュタージなどはよく知られるところだ。一般市民の監視や亡命者への迫害、さらには暗殺まで、その悪名はエスピオナージでもお馴染みだ。
では、旧西ドイツはどうだったか?憲法擁護庁など諜報機関の存在は知られているが、少なくとも攻性の組織はこれまで知られていない。本書はこれまで知られることのなかった旧西ドイツによる、旧東ドイツへのテロなどの工作行動の一端を明らかにしている。
本書では、組織にスカウトされて訓練を受けた1人の男を主人公として、旧東ドイツへ侵入しての破壊工作や、亡命者の保護などを行う様が克明に描いている。主人公が組織の仲間に絶対の信頼をおき、引き換えに家庭を壊してしまいながらも任務を遂行していく物語は、あまたの特殊部隊を舞台とした小説に見られる。しかし、彼がドイツ人であることを常に意識して読んでいれば、冷戦時代においては米ソの軍拡競争、第3世界での代理戦争だけではなく、東西両ドイツにおいても”戦争”が行われていたことを改めて認識させられる。ミリタリーマニアとしては、同じ敗戦国でありながら強固な軍事力を再組織、維持してきた西ドイツの軍に「実戦ではとても戦えない」といったような空気が漂っていたということが意外だった。自衛隊とは違う、とずっと思っていたのだが。
ところで、本書はノンフィクションではあるが、著者がその経歴を明かしていないため、その真贋が本国、あるいは先に出版された欧米でも論議されている。ドイツが統合されてもなお、著者が経歴を明らかにできない状況があるならば、それは本書がノンフィクションである証明といえるのではないか。民主主義政府といえども、権力は権力である。

初版2003/11 小学館/ハードカバー

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