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書評<トレイル・オブ・ティアズ>

トレイル・オブ・ティアズ The Trail of Tears
A.J.クィネル A.J.Quinnell
クローンによるコピー人間が今一つリアリィティを持たないのは、クローンの元の人間と育った環境や教育を同一には絶対にできないからだ。しかし、記憶をまるごと移植できるならば話は別だ。
情念の作家、クィネルの最新作はそのクローン技術をメインプロットに持ってきた。主人公は世界的な脳外科医ジェイソン。その彼が誘拐されるところから物語が始まる。ジェイソンは政府の秘密研究所で極秘に育てられている少年の脳外科手術を施すために誘拐されたのだ。その少年こそがクローン人間だった。自殺に偽装されたジェイソンの誘拐だったが、彼の別れた妻、リサはそれを信じず、彼女に協力する警官とともに彼を探し始める。それとは別に、ドッグショーで犬のクローンの疑いを持った獣医がその謎を追い始め、やがて秘密研究所に行き当たる。物語はテキサスのその施設に収束し始める・・・。
粋なバーテンダー、「行動支援応答」なる特殊班の男などなど、脇役までニヤリとされられる個性を造り込むクィネルの手法は健在。ただ肝心のメインの登場人物たちの魅力がイマイチ。主人公ジェイソンもその妻リサについても、初期のクィネル作品のような深い心理描写がないので、あまり感情移入できない。その分、読みやすいのも確かなのだが。慎重に張り巡らされた伏線など、物語の組み立ても確かなのだが、メインプロットである記憶の移植の説明が今一つ足りず、全体的には消化不良な感じだ。
初期のクィネル作品は人物描写が深い分、物語としてはベタベタともいえる。だがそんなクィネル作品を期待しているのは自分だけではないと思う。次回作に期待。

初版2000/05 集英社/ハードカバー

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