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書評<アメリカ特殊部隊 上・下>

アメリカ特殊部隊 Shadow Warriors
トム・クランシー/カール・スタイナー Tom Clancy/Carl Stiner
軍事情報小説家というよりも、もはや軍事に関する権威であるトム・クランシーが、アメリカの将軍にインタビューし、軍事作戦やアメリカ軍の実情について明かすシリーズの最新作。今回の共著のパートナーは、アメリカのパナマ侵攻作戦「ジャスト・コーズ」が敢行されたときに統合特殊戦軍団の司令官だったカール・スタイナー将軍である。といっても本書は特定の作戦に言及したものではなく、アメリカ特殊部隊の通史として読める。
特殊部隊のイメージとは、一般には屈強の戦士、ちょっと知識のある人なら不正規戦に対応する部隊といったところであろうか。しかし、戦場の前線深くに潜っての活動や破壊工作が特殊部隊の本分ではなく、むしろ他国の軍隊、あるいは友好的な勢力の兵士を訓練の実施など、部隊員本人は戦闘に関わらない部分の活動がメインとなることを本書は強調している。アメリカの特殊部隊の発祥がナチスドイツに対するレジスタンスの訓練や組織化を目的としていたことからもそのことが分かる。以来、特殊部隊の活動は普通の軍隊組織から離れていたこともあり、陸軍でその存在が軽んじられていた時期もある。しかし、歴史は次第に特殊部隊の不正規戦に対する能力を必要とし始め、アメリカ四軍から独立した軍団にまでなった。
本書はまだCIAがOSSと名乗っていた時代からの特殊部隊の活動を紹介、さらにスタイナー将軍が登場してからは表に出てくる活動だけではなく、軍内部での葛藤なども生々しく記されているのは「クランシー・将軍と語る」シリーズの共通点である。
本書はアメリカ特殊部隊の「正史」として書かれているので、特殊部隊の非公式な活動については意図的に隠されている。クランシーもそのことを隠していない。それでも、アメリカ特殊部隊の歴史と能力を正確に記されている良作だと思う。
このシリーズを通して感じるのは、湾岸戦争がアメリカにとって”理想の戦争”だったということである。空軍は各種の作戦参加機がいかんなくその能力を見せつけ、陸軍は機動機甲戦に圧倒的な勝利をおさめ、特殊部隊も戦後を含めてその能力を余すところなく生かした。だがその後の幾つかの作戦は成功よりもむしろ失敗が強調される傾向にある。クランシーは本書で「テロとの戦い方」について、いくつかの示唆もしているが、うまくことが運ぶか?兵器や作戦の優劣ではなかなか決着のつかない、軍事アナリスト泣かせの時代にクランシーがどんな作品を残すのか、要注目である。

初版2003/11 原書房/ハードカバー

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