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書評<戦争広告代理店>

戦争広告代理店
高木 徹
イデオロギーと偉大なる指導者の影が薄くなると同時に、民族問題が噴きだした旧ユーゴスラビア連邦。連邦からの独立を宣言する各共和国と、独立を阻止せんとする連邦=主としてセルビア共和国の間で、深刻な紛争が繰り返された。中でもボスニア・ヘルツェゴビナの独立の際には、クロアチア勢力、セルビア勢力、そしてボスニア勢力が三つ巴の凄惨な紛争となった。
独立する側にも、それを阻止する側にもそれなりの正義があり、本来、国際社会は両者を平等に扱い、調停すべきであった。それが何故かいつも悪役はセルビア共和国であり、後のコソボ自治州の独立紛争の際にはセルビアがNATOによる懲罰爆撃の対象になった。そうした国際世論はどうやって形成されたか?それを明かすのが本書である。
戦争にはプロパガンダが不可欠である。だがメディア全盛のこの時代、よほど巧妙に立ち回らないと庶民は嘘を見抜く。そこで、ボスニア勢力は自分たちに有利な国際世論の形成のためにアメリカの広告代理店を雇った。その広告代理店は、国際社会をマーケットに見立てて「作戦」を展開させていく。ボスニアの外務大臣を”悲劇のカリスマ”に仕立て、世論に訴えるキャッチコピーを流布する。自分たちの邪魔をする輩は抹殺していく。本当に商品を売り込むがごとく、「ボスニアの悲劇」を売り込んでいく。本書はセルビアが完全に悪役に仕立て上げられるまでを当事者たちのインタビューを中心にして組み立てられており、現代のプロパガンダの一端を見ることができる。
ボスニア・ヘルツィゴビナ紛争から10年経ったからこそ、その裏に何があったか垣間見ることができる良書である。

初版2002/06 講談社/ハードカバー

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