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2004.03.21

書評<帰ってきた二式大艇>

帰ってきた二式大艇
碇 義朗
自分の実家がある江田島は旧海軍兵学校、現在の海自第一術科学校があり、近隣の呉とともに海自の根拠地の一つである。小・中学校は江田島湾沿いにあったのだが、訓練などで集まった護衛艦をよく見ることができた。そして、PS-1が現役にあったときにはその離着水を目撃することができたのである。4発のデカい飛行艇が離水する様はえもいえぬ迫力があり、それをたびたび見ることが自分がミリオタになる一因となったと思う。それゆえ、飛行艇には特別な思い入れがある。
本書は第二次大戦中の日本の傑作機の一つ、二式大艇の開発から、現在、飛行試験が続いているUS-1改まで、連綿と続く飛行艇の開発の歴史をまとめたものである。飛行艇は水面から離着水するから、それに合わせ特殊な技術と経験が必要となる。総力戦の後の敗戦、10年の航空開発禁止、そして再開という歴史の流れの中で、川西から新明和への会社名が変わってもその技術を蓄積、発達させてきた技術者たちの”戦い”が細かく描かれている。高揚力装置や波消し装置など、個々の技術も平易に解説されているので、難なく読み進めることができる。
第2次大戦前後まで栄華を誇った飛行艇も、現在は陸上機の発達により”失われた飛行機の形態の一つ”となりつつある。US-1改の新たな技術との融合をはかっているとはいえ、基本的にはUS-1Aの改良型だ。そうした中で日本の飛行艇の歴史を振り返るのも、意義のあることだろう。

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