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書評<教皇暗殺>

教皇暗殺    RED RABBIT
トム・クランシー    Tom Clancy
トム・クランシーの<ジャック・ライアンシリーズ>の最新作。時系列的にはライアンがイギリス皇太子暗殺を防いだ直後、レッド・オクトーバー亡命の少し前の物語である。1980年代初期に起きたポーランドでの<連帯>による民主化運動と、バチカンでの教皇狙撃事件を下敷きにしており、ときのKGB議長アンドロポフが実名で登場するなど、クランシー作品では珍しいスタイルの作品といえる。
物語はCIA(アメリカ中央情報局)の情報分析員であるライアンがSIS(イギリス情報局)との協力体制のためにイギリスに派遣されるところから始まる。後にシリーズの中でCIA長官・副長官となるフォーり夫妻もまたモスクワ支局に派遣されたばかりである。そのフォーリに、バチカンの教皇暗殺計画を知り、良心の呵責にさいなまれるKGB本部の通信員であるザイツェフが接触してくるあたりから物語は動き出す。教皇暗殺計画が着々と進む中、フォーリもまたザイツェフをソ連から脱出させようと奔走する。果たして無事にザイツェフを国外へ連れ出し、教皇暗殺を阻止できるか・・・というのがメインのストーリー。
原題のRED RABBITとはソ連から脱出させるスパイのことであり、「教皇暗殺」よりもスパイたちの活躍がメインのエスピオナージである。クランシー作品なので手に汗握る脱出劇を描くのではなく、細かいディテールを積み重ねることにより、臨場感を演出している。よってエスピオナージにありがちな裏切り劇やどんでん返しを期待していると肩透かしを食ってしまう。
作品の全体的なイメージとしては「ライアンたちCIAの同窓会の思い出話を聞いている感じ」であった。冷戦という環境の中での熾烈な諜報戦だが、ある一定のルールの中での”グレート・ゲーム”。アンチ・テロリズムというルールなしの現在の状況との対比が強く印象に残った。

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