書評<ハバナの男たち>
ハバナの男たち HAVANA
スティーブン・ハンター Stephen Hunter
スティーブン・ハンターの2年ぶりの新作はスワガー・サーガ第7弾となる。舞台は1950年代、巨悪が蠢くキューバ。地元議員の護衛としてキューバに赴いたアールは、社会主義革命前夜のアメリカ・ソ連両諜報組織と、ギャングたちの謀略に巻き込まれていく・・・。
今作はダンディズム溢れるアールの姿とガンアクションは少なめで、革命前夜の謀略の物語がメイン。そういう意味では<悪徳の都>に登場し、今作ではCIAの一員となっているフレンチーこそが主役と言えるだろう。また、CIAとKGBにおけるスマートな新世代のエリートと、第2次大戦を引きずる古強者たちの対立も物語を通してのテーマである。ここにアールから息子へのサーガの継承の萌芽が見え始めているように感じる。
1950年代は表のアメリカ史においては、ベトナムの挫折をまだ味わっていない黄金期であるが、裏ではギャングたちが民衆を腐らせていく暗黒の時代でもあった。アールの物語は良質なサスペンスとともに、そのことを教えてくれる一流のミステリーであることを再確認させてくれる作品である。
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