書評<アジア冷戦史>
アジア冷戦史
下斗米伸夫
第2次大戦後、ヨーロッパとともにアジアの多くの国でも社会主義体制の国々が成立した。そしてヨーロッパで冷戦体制が崩れた現在でも、アジアでは少なくない国が共産主義を継続し(その実態がいかなるものであるにしろ)、対立も残している。この違いはどこから生まれたのか、本書はソ連崩壊後に公開された新資料などをもとに論じている。
ヨーロッパの共産主義各国はソ連を頂点としたいわば従属的な関係にあったが、アジアでは中国にそのリーダー的な役割をまかされた。だが様々な理由により、中国とソ連の対立が表面化したころから、アジアのもともと多極的な力関係もあって各々の国がそれぞれの思想と目的を持ち行動するようになる。それがヨーロッパで起こったようなドミノ的な共産体制崩壊が起こりえなかった要因の一つだ。その他、地政学や核を巡って、スターリンやその後のソ連指導者が西側に対抗するために、アジアをどう利用しようとしてきたかを軸に、アジアの近代史がいかなるものだったか分かる。
アジアの近代史は、少なくとも政治的には毛沢東やホー・チ・ミン、金正日たちの個人史でもあることが強く印象に残った一冊であった。
初版/2004/10 中公新書/新書
« おじさんたちのパーティー、あるいはサバト | Main | 1/72 三菱F-2 DAY 6th »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 書評<ベリングキャット ――デジタルハンター、国家の嘘を暴く>(2022.08.28)
- 書評<バルサ・コンプレックス “ドリームチーム”&”FCメッシ”までの栄光と凋落>(2022.05.25)
- 書評<冷蔵と人間の歴史>(2022.05.24)
- 書評<ザ・コーポレーション>(2022.05.23)
- 書評<狩りの思考法>(2022.04.19)
Comments