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書評<戦争請負会社>

戦争請負会社  Corporete Warriors
P.W.シンガー  Peter Warren Singer
今だ治安が安定しないイラク戦争後のファルージャで、”警備会社”の社員4人が反政府勢力に惨殺されたのは記憶に新しい。これに代表されるように、現在の戦争には民間の軍事請負業(PrivatizedMilitaryFirm=PMF)が深く関わっている。本書はこうしたPMFについて考察したものである。安全保障関係の本は何らかのバイアスがかかったものも多いが、本書はいたって公平な目線でPMFを捉える。
歴史を紐解くと、傭兵は紀元前の時代から存在していた。むしろ、軍が国家占有のものになったのは17世紀の国民国家の成立以降であった。それ以後も、政権が不安定な国家(主にアフリカ)を中心に傭兵は存在しつづけた。”ワイルド・ギース”や”戦争の犬たち”など、一般メディアにもたびたび登場した。現在のPMFがかつてと異なるのは、元軍人を中心に極めて組織化され、情報収集から優秀な装備を持っての戦闘まで一貫して請け負うことができることである。情勢不安定なアフリカでは国家を安定に導くこと・混乱に導くことができる規模の軍を独自に展開できる。また、欧米では兵站業務や訓練業務を中心にして民間が請け負う仕事が急激に増大している。本書ではアフリカで起こったことを中心に、PMFの具体的活動を通してその実態を描き出している。
不安定な世界情勢を受けて隆盛し続けるPMFだが、もちろん問題もある。PMFも企業である以上、利益を追求していかなければならない。そのためには、反政府ゲリラや麻薬カルテルといった反社会的な勢力のために働くこともあるだろう。また、国家が国民に最低限保障しなければならないのが安全だが、それをPMFに任せると、本質的に政府の機能を放棄しているといえるだろう。本書ではこうした問題を提起すると同時に、国際的な取り決め、国内法の整備などを提案し、現在ではコントロールがしにくいPMFの今後のあり方を提案している。
”民間の戦争屋”たるPMFを批判する国連が、自分たちの活動にPMFを必要とする矛盾。ここに本書のテーマが一番現れているだろう。

初版2004/12   NHK出版/ハードカバー

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