書評<パブロを殺せ>
パブロを殺せ KIKKING PABLO
マーク・ボウデン Mark Bowden
コカイン取引を中心とする麻薬ビジネスで、巨万の富を築いたパブロ・エスコバル。本書は彼と、彼を捕らえようとしたコロンビア・アメリカの政府・警察・軍関係者を巡るノンフィクションである。作者は「ブラック・ホーク・ダウン」の著者である。サブタイトルは「史上最悪の麻薬王vsコロンビア・アメリカ特殊部隊」とあるが、物語は常にパブロを中心に進んでいく。
パブロ・エスコバルという人物を生み出した、騒乱に満ちたコロンビアという国の歴史から、実質的な物語は始まる。パブロが腐敗と暴力に満ちた地域と国で、どうやって麻薬カルテルのボスにのし上がり、国家予算に匹敵する富を築いたかが克明に描かれる。
麻薬カルテルのボスになってからのパブロは、まさに法の及ばないところにいるコロンビアの”王”だった。その実態はハリウッド映画で描かれた麻薬のボスなど比べ物にならない。ライバル組織だけではなく、障害になる裁判官などはかたっぱしから暗殺していく。もはやパブロにとっては、法律による秩序などないに等しいコロンビアの状況の凄まじさは、治安回復今だならないイラクもかくや、というほどである。
また、パブロを追う者たちも様々な障害に阻まれる。アメリカの官僚組織どうしの対立、外より内に敵が多いコロンビアの警察など。だが、パブロも次第に追い詰められていく。そして逮捕の際の謎の残る射殺。そしてパブロが死んだとしても、ただ単に他の組織がそこにとって代わるだけという現実。どこまでもハードで、読み応えのあるノンフィクションである。
初版 2002/04 早川書房/ハードカバー
※ワタシはブックオフで購入しましたが、そろそろ文庫化されると思うので待つべきでしょうね。
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