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2005.02.15

書評<黒いスイス>

黒いスイス
福原 直樹
アルプスという自然。永世中立という政治体制。数々の精密機器の産地。ゴルゴ13も口座を持っているスイス銀行。スイスという国家のイメージはこんなところであろうか。
だが、スイスは小国ゆえに暗い一面も持っている。ナチス・ドイツ時代にドイツから逃亡してきたユダヤ人を追い返し、冷戦時代には抑止力のために核兵器開発を試みる。どれも国家を維持するために、ときの政府がとった政策であった。それをして、”黒いスイス”とは個人的にはオーバーな気もするが。
また、スイスは移民排斥の気風が強い土地柄でもある。本書では住民が直接投票で、移民の帰属を認めるか否かといった、直接民主制がいいのか悪いのか分からない事例が紹介されているが、難民に冷たい日本がとやかく言えることでもなかろう。アラブ系移民などは、もはやヨーロッパ各国でも”理想的な”ことばかり言っておられず、人種差別問題が浮かび上がってきていることは指摘しておかなければなるまい。
国家が生きる道として、どうゆう道をとるか。戦後の日本は安全保障をアメリカにまかせ、経済発展を選ぶ道をとった。スイスもまた別の道をとった。黒歴史というよりは、国家サバイバルの方法とでもいうべきものを紹介しているのが本書ではないだろうか。

初版2004/03 新書/新潮新書

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