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ミサイル防衛で何を守るのか

BOOKOFFで<SDIは核を無力化できるか>(RobertJastrow著・1985年刊行)を見つけたので買ってみた。当時のレーガン大統領がブチ上げた戦略防衛構想の解説書で、難解な技術的な話は極力抑えて、SDIで何ができるかが平易に書かれている。本書ではレールガンやX線レーザーなど突飛なものはともかくとして、弾道ミサイルのブースト段階(上昇段階)での衛星からのミサイルによる迎撃と、ターミナル段階(終末段階)での地上発射迎撃ミサイルについては1990年代初頭には実現すると楽観的な見方をしているが、それが実現していないのは言うまでもない。G-PALS計画やNMD/TMD計画を経て、今日やっと実用段階に達しようとしている。
SDIが発表された当時、自分はリアル中坊で、SDI計画はアメリカ全土、ひいては同盟国を守る傘だと思っていたのだが、本書を読んでまったく誤解していたことが分かった。SDI計画はアメリカの報復核戦力を守るものだったのである。
少し長くなるが解説。冷戦当時、米ソはMAD、相互確証破壊戦略をとっていた。どちらかが核による先制攻撃をかけても、それに報復できる戦力を備えている限り、両者とも先制攻撃ができない、という危うい安定状態である。しかし1980年代に入ってから、ソ連の弾道ミサイルの命中率が飛躍的に上がり、なおかつそれを大量保有するようになってから事情が変わってきた。ソ連がアメリカの核戦力を一気につぶすことができれば、報復攻撃を受けることなくアメリカを追い込むことができると考えられるようになったのである。いわゆる武力破砕核攻撃だ。武力破砕核攻撃を受けた後、アメリカに残された報復の方法は命中率の低いSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)によるソ連都市部への攻撃。しかし、それはソ連のアメリカの都市部への報復攻撃を招く。つまり、アメリカは降伏か、あるいは絶滅の道しか残されていないのである。SDIは、その事態を核戦力のエスカレーションなしで解決しようとしたものであった。つまり、アメリカの報復核戦力を守ることで、ソ連の先制核攻撃の誘惑を断ち切ろうとするものなのである。だから迎撃は100%でなくてもよく、50%でもサウスダコタだかノースダコタだかのミサイルサイロが残存すればよい。
ひるがえって日本のMD(ミサイル防衛)。ポスト・ブースト段階あるいはミッドコース段階の弾道ミサイルを迎撃するイージス艦配備のSM-3と、ターミナル段階のパトリオットPAC-3から構成される。SM-3はともかくとして、PAC-3は到達距離と高度をトレード・オフした関係で射程は30kmしかない。果たしてそのミサイルで広い日本の何を守るのか。政経の中心である東京?弾道ミサイルと同時に行われるであろう武力攻撃に対峙する自衛隊の基地?日本の報復戦力といえる在日米軍の基地?防衛白書には”国民の生命・財産を守るため”としか書かれていない。高い防衛費を使うのだから、そこまではっきりした戦略を自衛隊は示さなければなるまい。

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