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2005.04.04

書評<風の谷のナウシカ>

今さらではあるが週末に「風の谷のナウシカ」の原作を週末に一気読みした。なお、映画ではナウシカが救世主のごとく扱われているが、原作は決してハッピーエンドではないことを一応断った上で、テーマをしぼって雑感を。
①終末思想について
冷戦が終わって全面核戦争の恐怖が去り、1999年に”悪魔の大王”が来ることもなく21世紀が来てしまった今感じるのは、人類は滅亡というキレイな終末すら迎えられないのではないかということだ。もちろんユートピアなどなく、じくじくと現在の延長線上で生きていくことしかできないのではないか。戦争を代表とした人類の悪行もなくならない。そこにときどき、思い出したように良識が顔を出す。この繰り返し。宮崎さんの現時点での結論もそこにあるのではないだろうか。少なくともこの作品にそれより先の答えはない。ユートピアを見出すとか、「信じるものは救われる」よりよほどマシな答えだと思う。
②遺伝子操作について
生物のでいう「進化」という言葉はしばしば誤解を招く。「サルからヒトに進化した」がその代表である。正確には「サルとヒトは共通の祖先から分化した」が正しい。祖先から生まれた多数の突然変異体が様々な自然に「適応」したのが現在の類人猿の姿である。ヒトが現在の姿でいるのはほとんど偶然である。その突然変異の発生は放射線の影響とかいろいろあるけど、一番は雌雄交配である。地球の多細胞生物は何ゆえオスとメスの交配をするのかというと、遺伝の多様性を守り、生物としての多様性を守るためだ。その多様性はアクシデント(ウイルスの発生とか)の際に全滅を免れるための保険であり、進化を導く。
何が言いたいかというと、現在の地球の生物相は偶然と必然から成り立っているということだ。遺伝子操作による生物の改変はそのバランスを崩す。「人間は万物の長」ではなく、哺乳類に過ぎないことを忘れると、とんでもないトラブルを招く。過剰な自然保護をいってるのではない。科学も触れてはいけないものがあるのではないかということ。そのバランスを見つけなければならないときが来ていることを宮崎さんは示唆していると思う。俺の意見?遺伝子組み替え食物は食べてもいいと思うけど、男女の産み分けはしちゃだめ、だと思う。大切なのはバランスです。
(保存用に別ページ過去ログから転記・2003/05)

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