書評<CIA 失敗の研究>
CIA 失敗の研究
落合 浩太郎
9.11同時多発テロはどうして防げなかったのか?本書は冷戦終結後のアメリカの諜報活動に焦点を絞り、「テロとの戦い」の諜報面の実態に迫っている。表題は「CIAの失敗の研究」となっているが、アメリカの官僚機構の失敗、愚かな大統領府の失敗の研究といった方が正しい。
FBIその他の諜報関係の官僚機構とのナワバリ争い、政治の都合で決定される幹部人事、自分の都合のいい情報しか聞く耳を持たない大統領たち。”縦割り行政”は日本でつとに指摘されるが、かの国の状況もさほど変わらない。
CIA内部においても、作戦本部は「情報本部の分析が間違っている」といい、情報本部は「作戦本部はロクな情報を上げてこない」と互いに責任をなすり合っている。冷戦時代と違い、多様な国・文化を背景にした情報を収集し、分析するには人材が払底している。
日本にはCIAにあたる諜報機関はない。自衛隊の海外派遣も常態化される昨今、もはや情報収集機関なくして国家間を泳ぐには限界ではないか?これらアメリカの諜報機関の”失敗の研究”を生かして、CIAのカウンターパートを設置すべきときが来ていると思う。
初版2005/06 文春新書/新書
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