書評<国際テロ>
国際テロ 上・下
トム・クランシー
ジャック・ライアンは大統領引退後、対テロ・ブランチとして、1つの秘密組織を残した。<ザ・キャンパス>と呼ばれるそれはCIAやNSA、あるいは軍ではできないテロリストの”個別排除”が目的であった。その組織をジャック・ジュニアが父に無断で訪れるところから、物語がはじまっていく。
5~6年前のクランシーの新作なら、睡眠時間を削って4~5日でとりあえずは読了したものだが、発売から読了まで1ヶ月かかっているところからして、かつての読み込ませる設定や物語が薄くなっている証左だと思う。今やクランシー得意のハイテクは兵器などのいわゆるハードから、ネットワークやソフトに移っているし、テロリストたちもまた強固な意志の固まりではなく、正体がまったく見えないほど拡散している。ゆえに物語のキーとなるテクノロジーはあまりに身近なEメールだし、敵が拡散しているがゆえ、クランシーの小説のハイライトである”敵を一気に葬り去る爽快感”に欠ける。
ジャック・ジュニアが思ったほど活躍しないし、大ボスは名前が出てくるだけなので、”ジャック・ジュニア・サーガ”の前振りともいえる位置づけになるのだろうが、もうちょっとがんばってほしかった。
初版2005/07 新潮文庫/文庫
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