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2006.03.23

書評<眼の誕生>

眼の誕生  In The Blink of an Eye
アンドリュー・パーカー  ANDREW PARKER
稀代の進化論学者、故グールド博士は”カンブリア紀の大爆発”と称される生物の大量発生の研究により、進化は偶然の産物であること、また爆発的な進化と小規模な進化が繰り返される「漸進平衝説」を唱えた。では、なぜカンブリア紀の大爆発は起きたのか?グールドの著書「ワンダフル・ライフ」にはいくつかの説があげられているだけであった。本書はこの疑問に真正面から取り組んだものである。
本書の結論は実に単純である。「眼」の誕生により、生物の”追いつ追われつ”の時代が始まった。この場合の「眼」は光に対し単純に反応するものではなく、明確なイメージとして捉えられるものである。食べられる立場にあるものは防備を固めるためにトゲを備え、あるものは環境に隠れるように進化した。食べる立場にあるものは獲物の捕獲率をあげるため、それを砕くために顎を発達させたり、触手を備えることになった。それがさらに・・・という具合に、飛躍的に生物が様々な形態に進化する要因となったのが「眼」であるとする。もちろん、結論を証明するため事実を積み重ねるのが科学である。本書はそもそも光とは何か、現生動物の光受容器はどんな構造をしているかから話をはじめ、地球上に存在する化石に残される眼の痕跡の研究により、何が読み取れるのかを解き明かしていく。
本書の結論が正しいとすると、次に来るのは「では、なぜ眼は誕生したのか」という当然の疑問であるが、本書ではいくつかの仮説を紹介し、結論までに至っていない。仮説の中には銀河系の星雲としての動きにまで話が及んでいる。その証明は必ず、著者あるいは他の研究者がしてくれるに違いない。これだから進化論は面白い。

初版2006/03   草思社/ハードカバー

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