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2006.04.05

書評<雷轟 PAX JAPONICA>

雷轟 PAX JAPONICA
押井 守
アメリカの南北戦争が南軍の勝利に終わり、アメリカが分裂したまま世界のビッグパワーとなることなく進んだ架空の歴史。日本は敗戦を経験することなく、環太平洋の覇権を握っていた。そして現実のアメリカと同じように、冷戦時代のベトナムの泥沼にはまっていた。

押井カントクが構想を温め続けた”PAX JAPONICA”シリーズの第1弾となるのが本書「雷轟」である。だがカントクはシュミレーション・ノベルを書こうとしたのではない。海洋という自然の防壁に囲まれた狭い国ゆえに、稀有なメンタリティを持つ日本人。その日本人を「空爆する主体こそ絶えずその正義を問われる」状況、つまり覇権国家に投げ込むことにより、現実の覇権国家アメリカよりもっと不手際を重ね、右往左往する姿を描こうというものである。本書には本編となる短・中篇2編と、そこに到るカントクの構想、シリーズで描こうとするものが何かをカントクが答えるインタビューが収められている。
本編の方は、シリーズの発端となるアメリカ南北戦争の最後の戦いを描いた「アンティータム」、効果のない空爆にイヤ気のさした旧式爆撃機のパイロットがもくろむ、とある計画の顛末を描いた表題の「雷轟」となる。だがカントクの小説なので、軍事スペクタクルになろうはずがなく、アクションは少なめ、男や女が延々と兵器や政治的状況について語る、ファンにはお馴染みの形式だ。

カントクのインタビューと構想を信じるならば、このシリーズは年代記の形をとるようだ。大まかな架空の歴史の流れに沿って、個々の戦場のエピソードを描くことにより、現実の日本の姿をあぶり出す。自分などは「待ってました!」というシリーズ開始だが、完結するのはいつになることやら。カントクが飽きることなく、ライフワークとして続けてほしい。願わくば映像化も。

初版2006/03 エンターブレイン/ハードカバー

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