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2006.04.10

書評<「イスラムvs.西欧」の近代>

「イスラムvs.西欧」の近代
加藤 博
トム・クランシーあたりの小説でよく使われる「イスラムのテロリストは原理主義のごく一部の連中で、大部分のイスラム教徒は平和を望んでいる」というようなロジックは、昨今のイスラムと西欧のギクシャクした関係を見ると、首をひねらずにはいられない。西欧の人々はイスラム教徒の偏狭さを嫌い、イスラムは人権を盾に無神経にふるまう西欧の人々を嫌っているように見える。テロリストを”一部のハネ返り”とするのは、思考停止というものだろう。本書はそうした状況の中で、イスラムの、西欧への違和感がどこから生まれたかを探るものである。
だが本書は分析の報告というよりも、近代エジプトを中心とする歴史書だ。オスマントルコの時代から第2次大戦にかけての激動のエジプトを、その時代の知識人と思想を紹介し、西洋世界と文明について距離感の変化をみる。植民地統治と独立の気運の繰り返しの中で、近代・キリスト教・ヨーロッパへの嫌悪感が徐々に醸成されていく歴史を辿る。
残念なのは結論がイマイチ弱いところだろうか。あとがきで著者は、イスラムの、近代・キリスト教・ヨーロッパへの嫌悪が克服不可能ではない、としているが、個人的にはどうにも克服不可能に見えてしまう。イスラムの偏狭さはヨーロッパあるいはアメリカの鏡でしかないとしているが、ならばイスラムからも不寛容を改めなければならないのではないかと思うのは、自分があまりに西欧文明に毒されているからだろうか。

初版2006/04 講談社/現代新書

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