書評<サッカーが世界を解明する>
サッカーが世界を解明する How Soccer Explains the World
フランクリン・フォア Franklin Foer
サッカーと政治や経済がいかに深く根付いているかというノンフィクションとして、サイモン・クーパーの<サッカーの敵>があるが、本書のスタイルはそれに近いものがある。サッカーそのものではなく、その背後にひそむものを世界を股にかけて取材し、ルポしていく。
原著が2004年ということで、サッカーの世界の”経済のグローバリズム”後をキーポイントとしているが、サッカーの世界では1992年にかの”ボスマン判決”により”自由化”が一歩先に進んでいた。よって、グローバリズムが極端にこれらのサッカーカルチャーに変化をもたらすことはない。旧ユーゴスラビア紛争後のセルビアの状況やスコットランドリーグのセルティックとレンジャーズの対立、イングランドのフーリガンなど、フットボールカルチャーにおいてはお馴染みのテーマにおいては特にそうだ。もちろん、サッカーは世界の鏡といえるので、その影響は逃れられない。資源輸出国が貧困国として固定され、工業国が富を独占する構図は、ブラジルやアルゼンチンが優秀な選手を生むのにも関わらず地元はヒドイ状況で、欧州のビッグクラブにばかりスポットが当たる現在のサッカー界と相似形にある。
著者がアメリカ人ということで、前記のおなじみのテーマに加えて、イスラムが支配するイランのサッカーを巡る状況や、北米大陸におけるサッカーの状況などは興味深く読める。今後は、TV放映権の値下がりなどバブルがはじけかけている欧州サッカー界の今後をルポルタージュしたものを読みたいものだ。
初版2005/05 白水社/ハードカバー
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