書評<立喰師、かく語りき。>
立喰師、かく語りき。
押井 守
「立喰師列伝」の公開に合わせ、新作を話題にした対談を中心にした本。ホントは映画を見て読んだ方がいいんだけど、そこは地方の悲しいところ。
メインになるのは鈴木敏夫・笠井潔・冲方丁との対談。映画が敗戦後の昭和史をバックボーンにしているため、高校生のころのカントクが参加していた60年~70年代の学生運動が話題の中心となる、笠井潔との対談が一番濃い。鈴木敏夫へは相変わらずジブリへの悪口、沖方丁とは情報や体験の捉え方の世代間の違いというところ。
もちろん、ページ分量の半分は映画に関すること。「立喰師列伝」そのものと、登場するキャラクターたちへのカントクの思いが語られ、また出演者たち(同時にカントクに縁のある表現者たち)が映画に何を思うのかが掲載されている。
印象に残るのは、カントクより少し上の、革命を為しえなかった団塊の世代への恨み、またその世代が投げっぱなしにした結果できあがった、システム化した社会への恨みか。この恨みが、執念深く、繰り返されるテーマ(妄想)に滲み出る。そして滲み出る妄想、つまり起きるはずのない革命をテーマにした作品群ゆえ、一部の人間が熱狂的に魅かれてしまう。よって鈴木敏夫がいかにエゲツない広告宣伝をしようと、ジブリ作品のようには決してならないと思うのだが。
初版2006/04 徳間書店/単行本
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