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2006.05.10

書評<ネオ共産主義論>

ネオ共産主義論
的場 昭弘
まず、極私的な感想。マンガ、ノベルその他SFをいろいろと読んできたつもりですが、あまりに不勉強でした。かの<アップルシード>の世界観なんて、まるっきりプラトンの思想からなのね。
というわけで、本書は”ネオ共産主義”と銘打っているものの、共産主義のルーツとして、ユダヤ教の旧約聖書のユートピア思想や千年王国論までさかのぼり、共産主義思想の発展を追った、入門書となっている。
本書はマルクスに触れることもない、一般人が抱きがちな疑問に沿って、共産主義思想を紹介する。
共産主義と社会主義はどう違うのか?社会主義の行くつくところが共産主義、と簡単に説明しがちだが、実はその境目は曖昧である。
共産主義のルーツはどこにあるのか?根底にある旧約聖書の教えから、有名な哲学者、前マルクス、さらにマルクス後まで、様々な段階、方向に進む共産主義思想を紹介する。
共産主義思想にはどんなものがあるのか?実は一般人が抱く共産主義のイメージは、”空想的共産主義”として、マルクスに批判されているものである。共産主義者がなぜバラバラの派閥に別れ、闘争するのか納得。
共産主義に共産党はなぜ必要か?20世紀の共産主義国家が、個人崇拝と粛清にいたる構造がなんとなく理解できる。
そして、グローバリズムと称して、大国のエゴ溢れる資本主義が展開される昨今、新たな共産主義思想は生まれるのか?著者はわずかなヒントを示すが、性急な革命にはクギをさす。
新書なので、モノホンの共産主義者にとっては、それぞれのテーマに沿って、思想の表面をなぞっているに過ぎないんだろうが、資本主義社会のだらけた消費者(ワタシ)にとっては、いかに歪んだ反共思想を抱いてたのかがよく分かった。また、規制緩和前の日本がいかに社会主義的であったか、北朝鮮や中国がいかに歪んだ社会主義であるかも感じることができる本である。

初版2006/05 光文社/光文社新書

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