書評<ウルトラ・ダラー>
ウルトラ・ダラー
手嶋 龍一
北朝鮮が国家ぐるみで行う犯罪の一つ、偽ドル製造。”スーパー・ダラー”と呼ばれる精巧な偽ドルを超える”ウルトラ・ダラー”が発見された。いち早く動き出したSIS(イギリス対外情報部)の日本在住のインテリジェント・オフィサーを中心として、アメリカ財務省、日本の関係官庁、偽札感知器製造者まで巻き込んで、国際的な謀略劇が幕を開ける・・・。
元NHK海外局長による、国際謀略劇を描くフィクション。だが、そこかしこに昨今のニュース・ソースを織り込んでおり、”どこまでがフィクションか”という宣伝文句はともかくとして、グイグイと引き込まれるように読み進める。
だが、”北朝鮮””偽札”というような身近な?プロットを除いてしまえば、案外と分かりやすいエスピオナージだ。女たらしのSISのオフィサーがその人脈を生かして、国際謀略の闇にせまる、という大活劇でもある。
あくまでフィクションではあるが、著者(あるいは著者が取材した関係者)の東アジア圏を巡る国際情勢の見方はなるほど、うなづけるものがある。
本書のドラマの決着を読んで感じるのは、中国、アメリカといった大国の戦略にあっては、日本も北朝鮮もかの国のチェスの1コマに過ぎない、ということ。核を持たない国の現実の1つである。
初版2006/02 新潮社/ハードカバー
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