書評<飛び道具の人類史>
飛び道具の人類史―火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで THROWING FIRE
アルフレッド・W・クロスビー Alfred W.Crosby
人類と他の類人猿との違いの1つとして、”ものを投げる”という能力は意外と知られていないのではなかろうか?類人猿は道具を使っても、人間のような”投擲”はできない。樹上から地上に降り、二足歩行を始めた人類は”ものを投げる”能力を持つこととなり、知恵をもってその能力を”延長”し始める。そして、もう1つの人類の特徴である”火を恐れない”がそれに結びついたとき、人類の1つの革新が始まる。本書は”飛び道具”がいかに人類の繁栄と争いを促してきたかを辿る歴史書である。
本書は、人類が直立二足歩行を始めた時代から始まる。投石という一見、簡単な行為がいかに人類を狩りの名人にすることになったか?そして人類は槍を生み出し、その到達距離を延長し、さらに重い石を投げる装置を発明するという、流れを紹介する。一方、人類は”火を使う”ことを覚える。それは槍などの武器と結びつき、大砲や小銃に結実する。中世にいったん、そのテクノロジーの発展は止まってしまうが、産業革命からはアポロ・ロケットまで一直線である。
本書のおもしろさは前半部分の、”ものを投げる能力”の発展部分だと思う。後半以降はむしろ、火薬の発明による、戦争の歴史でもあり、その歴史なら従来よく知られるところだからだ。人類が他の亜種や類人猿と分かった能力の一端を深く知ることができる。
本書の前書きにある「ミサイルが穿った穴の中であれ、宇宙空間であれ、人類はあいかわらず火を投げながら最期をときを迎えるのだろう」というのは、しごく名言である。
初版2006/05 紀伊国屋書店/ハードカバー
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