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2006.07.18

書評<ナポリのマラドーナ―イタリアにおける「南」とは何か>

ナポリのマラドーナ―イタリアにおける「南」とは何か
北村 暁夫
都市国家を併合する形で誕生した国家、イタリア。この国には北部と南部の地域差、対立が存在する。いわく工業が発達した北部が、貧しい南部を支えている。いわく南部のマフィアがイタリアの治安を乱し、国家のイメージを悪くする。そして、その象徴が1990年のイタリア・ワールドカップ、南部のナポリで開催された準決勝<イタリアvsアルゼンチン>の皮肉な構図だった。ナポリにスクデットをもたらして”神”と崇められていたマラドーナ。イタリアという国家と通り越して、ナポリの市民はスタジアムでアルゼンチンをサポートするのではないかと試合前に危惧された。一方、イタリア代表には南部出身のスキラッチがおり、不振のイタリア代表の救世主となっていたので、市民がアルゼンチンをサポートすることはないともいわれた。
こうしたイタリアの南北問題はどのような歴史的構図から生まれたのか。イタリアという国民国家成立の過程を辿り、それを明らかにするのが本書である。そこにあるのはヨーロッパに根強く残る人種差別であったり、政府の政策の失敗であったり、様々な要素が絡み合う。
そして、筆者はマラドーナの母国、アルゼンチンを”南の延長”として捉え、議論を深めていく。移民を通して、イタリアとアルゼンチンは深く繋がる。サッカーの話題に絡めれば、セリエAに所属する選手たちの2重国籍の問題などもその範疇に含まれるだろう。
果たして、ナポリの市民はどのような選択をしたのか。当事者のマラドーナは何を語ったのか。世界の問題を語るのに、サッカーほど的確なメタファーはない、と本書はつくづくと感じさせてくれる一冊である。

初版2005/11 山川出版社/単行本

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