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2006.07.14

書評<パールハーバーの真実>

パールハーバーの真実 技術戦争としての日米海戦
兵頭 二十八
我々は後知恵で、太平洋戦争の開戦はハル・ノートという脅迫の結果であり、太平洋戦争の敗戦は国力の違いを楽観視し過ぎた愚かさであると論じる。しかし、楽観論にしろ、先制攻撃を仕掛けた海軍に“成算”はあったはずだ。本書はパールハーバーの奇襲攻撃から、ミッドウェー海戦までの当時の兵器の性能を詳細に検討し、兵器のディテールから当時の海戦とはどのようなものであったかを検討する。
であるので、本書の中心は当時の魚雷、魚雷を搭載する艦攻、艦攻を搭載する空母の性能と運用はどのようなものであったかを数値的に検討するものである。著者が過去の著作を引っ繰り返し、兵器のカタログ・スペックではなく現実のスペックにせまってはいるが、スペックの羅列には変わりない。まさにミリオタのための本であるが、著者が指摘するのは当時の海軍幹部も、こうしたオタク的思考に首まで浸かっていたということである。海軍の兵器は陸軍に比べてマス・プロダクトとは言い難く、少量生産・改良の繰り返しで2ちゃんねる(軍板)流にいう“スペック廚”が発生する土台があった。それが、パールハーバー奇襲の成功を確信しえる土台にもなり、ミッドウェー海戦の敗北の必然になっていたというのが、著者の主張だ。山本五十六の将官としての器を論じるのではなく、ミリオタとしての彼がどのような兵器の開発を推進していたのか。太平洋戦争開戦と敗戦が、魚雷の性能、もっと言えば航空機搭載の機銃の口径がどのように関わっていたのか。大状況とはまったく別の視線からの太平洋戦争論である。
追記;
技術戦としての第二次大戦も同種のテーマの研究本なので、興味のある方はご一緒に。

初版2005/12 PHP文庫/文庫

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