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2006.08.30

書評<なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか>

なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか  Abducted
スーザン・A・クランシー  Susan A.Clancy
エイリアンに誘拐され、実験されたりすることをアブダクションという。いうまでもなく、ミステル矢追の定番ネタだ。彼・彼女らアブダクティたちは、たいてい催眠療法によりその記憶を取り戻し、物証の類は何もない。なにゆえ、彼らは曖昧な記憶を信じ込むのか。本書はいわゆるトンデモ本ではなく、心理学者である著者が、アブダクティたちの思い込みの構造を推測し、解き明かしていく。
著者はハーバードの心理学者であり、いわゆるビリーバーとか懐疑論者とかはあまり関係なく、催眠によって記憶を取り戻す催眠療法の是非を巡る研究の論争の延長として、アブダクティたちにインタビューを試みる。著者はアブダクティたちのあいまいな記憶を睡眠麻痺などで説明できる理論を持っている。だが、実際に話をきいたアブダクティたちは納得せず、強固な思い込みは崩れることはない。そして、その異常な体験を拒否するどころか、人生の支えにする傾向すら見られる。彼らは心理学的に見てどのような傾向があるのか。科学の時代に生まれているはずの人々がなぜ超常体験を求めるのか。それを著者は説明していく。
最近、読んだマンガに「人間は強い人間や、いいかげんな人間だけではない」という台詞があった。この科学技術の時代、強い人間なら現代科学で説明できる全てのことを信じることができるだろうし、いいかげんな人間なら理解の範囲外のことは切って捨てるか、”保留”することができる(自分はもちろん後者)。その間の多数の人たちの心の隙間に入り込むものとは何か。アブダクションはその好例として当てはまるのかも知れない。

初版2006/08 早川書房/ハヤカワ文庫NF

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Comments

へぇこの本面白そうですね。今度読んでみたいです。
「その異常な体験を拒否するどころか、人生の支えにする傾向すら見られる」ていうのがなんとも…人間ってカナシイなーと思わせますね

>rocketeerさん
この本、ヘンに学術的じゃなく、読み物として面白いのでオススメです。人は、というかアメリカ人の思考回路の推測にも役立つかも、です。

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「なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか」(早川書房刊、スーザン・A・クランシー著、林雅代訳、06年8月31日初版)を読み始めました。まだ読み始めな上にrocketeerは妙に読むのが遅いので本論に関するコメントはちょっとまだあれなわけですが、前書きに驚愕の数字が載っていました。読み下しますとアメリカにおいて 地球外生物は存在すると思う…93% エイリアンは地球に(すでに)やってきていると思う…27% ほかの惑星(�... [Read More]

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