書評<シャドウ・ダイバー>
シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち SHADOW DIVERS
ロバート・カーソン Robert Kurson
スキューバ・ダイビングの中でも、海底深く眠る沈没船をターゲットとし、遺物を調査するダイビングをレック・ダイビングという。1991年、アメリカ東海岸でも最高のレック・ダイバーであるチャタトンとコーラーは、ニュージャージー沖の深度70mにW.W.Ⅱ時に沈んだと思われるUボートを発見した。だが、それはどの記録にも残っていない、謎だらけの沈没船だった。チャタトンとコーラーは何かにとりつかれたようにその正体をつきとめるため、ダイブを繰り返す。
死と常に隣り合わせにあるレック・ダイビングの世界と、60年を経てもなお謎を残すUボートの歴史の一端を垣間見ることのできるノンフィクション。本書はまず、減圧症など様々な危険が伴う、知られざるレジャーであるレック・ダイビングを詳細に解説し、主人公であるダイバー2人の半生を掘り下げていくことにより、読む者をグイグイと引き込んでいく。そして調べれば調べるほど謎が深まるUボートの調査は、潜水艦戦の特異さと悲惨さを我々に見せてくれる。
主人公2人にとって、危険ではあるが”レジャー”であったはずのレック・ダイビングが、謎のUボートとの出会いにより、自分自身そのものを問い、賭ける”冒険”になっていく。名誉や賞賛を得ることを超えて、歴史そのものを探求するようになる主人公たちの姿はただ、気高い。
危険なダイビングのスリルと、歪んだ歴史の探求が両立した物語に、グイグイと引きつけられて、分厚いハードカバーをあっという間に読んでしまった。素晴らしいノンフィクションである。
初版2005/06 早川書房/ハードカバー
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