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2006.11.10

書評<テレビ標本箱>

テレビ標本箱
小田嶋 隆
地上波テレビ放送は大きな利権が絡む、政府の許認可事業だ。なおかつ、スポンサーから集金して我々に広告を届ける事業でもある。ゆえに、そこから発せられる情報は、歪む。考えると当然のことなのだが、最近までそのことに気づかなかった。いや、テレビ局がそれを巧妙に隠していたはずなのに、それが露骨に見えてしまうようになったんだと思う。もちろん、情報を様々な角度から検証できるネットの発達は大きいが、テレビ局自体もなりふりかまわなくなっているんだろう。映画やCMの番宣が連なるワイドショー、明らかに手抜き編成の改変期、政治やスポーツをバラエティとしか演出できない番組。愚かな大衆に向けた、愚かなメディア。
本書はそうした地上波テレビ放送の現状を鋭く抉ったコラムをまとめたものだ。著者の週刊誌連載をまとめたもので、軽妙なジョークを交えたコラムに、上記のような末期的なテレビメディアの現状が見える。洒落を交えた皮肉に、テレビを見ていたときに感じた違和感の正体が分かり、思わずうなづいてしまう分析力と表現力に脱帽。
問題は、それだけ分かっていてもテレビをやめられないことだな。さすがに最近はNHKがほとんどのような気もするが。受信料を払っているかはヒミツ。

初版2006/11 中央公論新社/中公新書ラクレ

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