書評<七王国の玉座-氷と炎の歌>
七王国の玉座〈1〉―氷と炎の歌(1) A GAME OF THRONES/A SONG OF ICE AND FIRE
ジョージ・R.R. マーティン George R.R. Martin
季節が不規則に巡る異世界。大陸を支配する<七王国>は、ドラゴンの血を引くといわれる古代王朝を倒して成立した。だが、多くの貴族たちはその玉座を巡って虚々実々の駆け引きを続けている。北の地で暮らすスターク家の人たちも例外ではなく、当主のエダードが王の補佐に任命されて以後、覇権を巡る陰謀に巻き込まれることになる。
本来ファンタジーものは苦手なのだが、BARSERGAさんはじめ絶賛のため、年始休暇の友として読み始める。だが読む前の偏見と違い、権謀術数を駆使した陰謀の物語で、差別もあればセックスもある、大人の大河ドラマだ。物語の世界は中世ヨーロッパに近いが、ドラゴンや異形人と呼ばれる架空の存在を伝説の中に押し込めようとする感じが、どこか我々の社会の感覚と似ている。
登場人物たちも個性的で、中心となるスターク家の兄弟でさえ、様々な立ち位置と背景を持ち合わせており、物語を重厚にしている。
名誉、金、権力と様々な欲と血縁関係が複雑に絡まり合い、プロットはときに予想通りに、ときに意外に進んでいく。クライマックスに至っては、登場人物たちの行き先が知りたくて、読むのが止められない。
今回、文庫化された<氷と炎の歌第一部1~5>は、壮大な群像劇の幕開けに過ぎず、登場人物の1人にいたっては本筋にまったく絡まずに終幕まで来ている。ハードカバーで続編となる王狼たちの戦旗〈氷と炎の歌 第2部〉がすでに出ているが刊行されているが、厚いその本を買うか、文庫まで待つべきか。久々に迷う作品だ。
初版2006/05 早川書房/ハヤカワ文庫SF
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