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2007.01.07

<本能はどこまで本能か>

本能はどこまで本能か―ヒトと動物の行動の起源  Basic Instinct
マーク・S. ブランバーグ  Mark S.Blumberg
本能とは便利な言葉である。動物たちのフシギだが実用的な行動を本能で片付けてしまえば、これほど簡単なことはない。人間も一緒で、あらゆる行動が遺伝子に組み込まれているとするなら、ゲノムを解析すればあらゆる行動が予測できることになる。
だが、そんなに便利な言葉あるいは概念を否定するのが本書だ。動物の行動を詳細に観察した実例をしめすことで、哺乳類であれば胎盤の上、爬虫類や鳥類であれば卵内から環境の大きな影響を受ける。もちろん、一番大きく影響を及ぼすのは親だ。
後半では、人間にあらかじめ様々な能力がプログラミングされているとする”生得論”に反論する。発達と経験による行動を、この固定概念がいかに歪めているか。充分な再現実験に基づいて理論を実証する”科学”とは程遠い生得論を批判し、客観的な視線を持つことを読者に促す。
人間含めた動物の行動を、我々はなるべく単純な概念で説明し、理解したいと望みがちだ。だが行動は遺伝子、経験、発達など複雑に絡み合った結果であることを本書は説明してくれる。

初版2006/11 早川書房/ハードカバー

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