書評<夜は短し歩けよ乙女>
夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦
(BARSERGAさん推奨)
京都は今出川通りから烏丸通りぐらいまでを舞台にして、同じ大学の”黒髪の乙女”と、”先輩”を軸に、奇妙な登場人物が織り成す、奇妙な物語。個性的な登場人物と出会う短編を折り重ねながら、飄々とした”黒髪の乙女”と、理屈っぽい片思いを抱える”先輩”の距離が近づいていく。
普段の読む本が偏っているので、久々に「文学を読んだなあ」と感じる作品。古風な比喩が並ぶ中に、カタカナが混ぜ込まれる独特の文体。それが、ある種ファンタジーな登場人物と舞台を強調する。自分は京都に割と長く住んでいて、出てくる地名のあたりの風景もイメージできるのだが(おそらく舞台の中心は京大)、こんなにファンタジー溢れる街に表現できる著者のウデに脱帽。
オビには恋愛小説と書いてあるのだが、個人的には”黒髪の乙女”の「京都裏町冒険物語」という感じが強い。さらに個人的な感想だが、作品を読んで浮かんだイメージを一言で表現すると、今敏監督のアニメ作品。そういう鮮やかな舞台イメージと、凛としながら愛らしい人物たちが織り成す物語。
クルマがないと何もできない郊外の大学じゃなくて、京都みたいな街中の大学に行けば、オレの青春も違っていたのかも。
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