書評<広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由>
広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス Where is Everybody?
スティーブン・ウェッブ Stephen Webb
幼少のころからSFを読んで来た自分にとっては、宇宙人の存在はデフォルトである、と言っても過言ではない。銀河の想像を絶する広大さは、高度知的生命体がいないはずがない、と感じさせる。宇宙人とはまだ連絡が取れないだと。
しかしながら、進化論が趣味の自分にとっては、地球の生命の存在は偶然に過ぎないのではないか、と強く感じるようになっている。まして”通信”ができるまでの生命、つまり人間の存在は我々だけではないかと。
本書は数々の努力に関わらず、我々人類が今だ孤独なのはなぜか、天文学、物理学、生物学など総合的な観点から検証する。「いないことを証明」するのは困難だが、その困難なパラドックスの証明に挑む。
構成としては、「宇宙人はいる」「宇宙人はいるが連絡が取れない」「宇宙人はいない」の3つを軸に、表題のとおり50の理由を検討し、パラドックスの解決に取り組んでいる。50の理由の1つ1つに対して、ときに数式を用い、ときに最新の論文を用いながら真摯に取り組んでおり、もはや自分の数学的理解力からはみ出してしまうこともあるが、総じて納得のいく結論が出てくる。
本書では目からウロコが落ちるような事実にも出会う。当たり前の存在と思っていた惑星の存在が、わずか70個足らずしか実は確認されていないこと、地球の生命の誕生は惑星の軌道まで考慮に入れる必要があることなど、興味深い事実に驚く。
個人的には「宇宙に流れる時間に対して、人類が持ちうる時間はあまりに短く、他の知的生命体と出会えなかった」(fromクラッシャージョウby高千穂遥)という考え方が一番まっとうなのかな、と思う。もちろん、本書を読んでどの理由を採用してどんな結論をとるかは、もちろん自由だ。
初版2004/06 青士社/ハードカバー
« 本日のお買い物 070211 | Main | Mig-21bis Day3rd »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 書評<ベリングキャット ――デジタルハンター、国家の嘘を暴く>(2022.08.28)
- 書評<バルサ・コンプレックス “ドリームチーム”&”FCメッシ”までの栄光と凋落>(2022.05.25)
- 書評<冷蔵と人間の歴史>(2022.05.24)
- 書評<ザ・コーポレーション>(2022.05.23)
- 書評<狩りの思考法>(2022.04.19)
Comments
The comments to this entry are closed.
こんにちは
太陽以外の恒星が持っている惑星(系外惑星)が、ほとんど見つからない!?ことを知ったのは末娘とプラネタリウムに行った時でした。
単純に沢山見つかっていると思っていた知識はSF小説からの刷り込みだったことにショックを受けました。
いやいや、観測しきれない遠くにいっぱいあるかも知れないじゃないか!と、思ったりしましたが、どうなんでしょうね?
それでは、また。
Posted by: 高○ | 2007.02.15 19:32
>高○さん
こんばんはー。
いや、SF小説の刷り込みってのは大きいですよね。
基本的には我々の太陽系だって遠くから見れば太陽しか観測できないでしょうから、まだまだ希望があります!(笑)
Posted by: ウイングバック | 2007.02.16 17:40