書評<つっこみ力>
つっこみ力
パオロ・マッツァリーノ
統計調査に”ツッコミ”を入れ、社会学者や経済学者が唱える”常識”に異を唱える著者の新作。
本書は大きく3つのパートに分かれる。第1章では表題の”つっこみ力”について。メディアリテラシーが叫ばれて久しい昨今だが、対象に反論を論理的にするよりも、”お笑い”でいうところの”ツッコミ”の方が格段におもしろく、世間に受け入れられることを主張する。権威に対しても同様。自分的に解釈すると、「それは間違いだ」と真っ向から批判するよりも、あさっての方向にツッコんで”皮肉”に昇華する、ということになると思う。相手がヒステリックに陥れば、思うツボというところか。
第2章は職業について。ヤクザさんの転職を軸に、日本人の職業に対する考え方を探る。朝日新聞の投書欄から意識の変化を探る視点が斬新。
第3章はデータとのつき合い方。様々なデータに基づいた社会学者や経済学者の分析がいかに恣意的なものであるかを批判する。過去の著作から連なる、著者の真骨頂だ。一見、相関関係がありそうな失業率と自殺率に関しても、よくよく調べてみるとまったく別の結論が出てくる。
「経済学者はみんな死ねばいいのに」とは文中の登場人物の言葉だが、妥当そうなデータや理論にツッコミを入れ、自分なりの解釈を見つけることの大切さを著者は説く。得体の知れないコンサルタントが出入りし、アンケート数字やデータが踊る企画書をもっともらしく使う中小企業の営業職としては、身のつまされる思いがするのが本書だ。
初版2007/02 筑摩書房/ちくま新書
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