書評<空の帝国 アメリカの20世紀>
空の帝国 アメリカの20世紀
生井 英考
アメリカは世界の空を支配する”帝国”である。軍事はいうまでもなく、民間においてもFAA(連邦航空局)の定めるルールが事実上、ワールド・スタンダードだ。いかにして、大国は世界の空を支配するに到達したか?本書はその歴史を追う。
その歴史は当然のことながら、キティホークの丘から始まる。ライト兄弟の世界初の動力飛行だ。その時代、アメリカは開拓時代の終わりを自覚し始めていた。ライト兄弟は次なるフロンティアとして空を目指す先駆けであった。
航空機はW.W.Ⅰをはさんで実用機として発展し、航空戦力がキーポイントとなるとともに、民間でも世界を繋ぐ航路が発展を始める。
と、ここまでは興味深い本なのだが、歴史がW.W.Ⅱを迎えるところぐらいから、物語がアメリカ空軍の戦略の変化が中心となってテーマが微妙にずれていき、9.11のころになると、アメリカという国の”気分”の話になる。つまり、本の主題がフラフラとして、ワンテーマの歴史書になっていないのである。高価な歴史書として発行されているのだから、これはいただけない。テーマの目のつけどころ自体は素晴らしいと思うのだが。
初版2006/11 講談社/ハードカバー
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