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2007.03.07

書評<沈黙のフライバイ>

沈黙のフライバイ
野尻抱介
「ロケット・ガール」シリーズがアニメ化された著者のSF短編集。表題作など5編が収録されている。いずれの作品も「異星人とのコンタクト」といった大テーマではなく、あくまで現実の延長線にあると錯覚してしまいそうな作品ばかりである。例えば、作品に登場する軌道エレベータといったSFに定番のアイテムは、それに使われるカーボンナノチューブなど突破すべき技術の壁はあるのだが、それをまったく感じさせず、5年後にはありそうな感を抱いてしまうのは著者の腕であろう。それでいて曲げられない物理法則はキッチリと守り、それをうまくドラマに組み込んでいる。短編ゆえに登場人物も、強固な意志を秘めたいかにもなアストロノーツから、なんとなく身近にいそうな技術系女子大生まで、幅広く楽しめる。登場する技術的ガジェットから人間まで、バランスの取れた作品群である。

初版2007/02 早川書房/ハヤカワ文庫JA

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