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2007.04.03

書評<マルドゥック・ヴェロシティ>

マルドゥック・ヴェロシティ1
マルドゥック・ヴェロシティ 2
マルドゥック・ヴェロシティ 3
冲方 丁
近未来。終戦後の復興に都市が邁進する一方で、戦時中のツケの”清算”も始まっていた。戦闘中の負傷の治療の過程で、超人的な”機能”を持つべく改造された兵士たちはその清算から逃れ、自分たちの有用性を証明するため、実験施設から都市に出て、犯罪の証人保護を仕事とする。やがて始まる、ギャングスターとの抗争。自分たちとは似て非なる人体を改造された拷問官たちとの戦闘。すべてが虚無に向かうことが分かっていながら、加速していく男と女たち。

前作<マルドゥック・スクランブル>で敵対するウフコックとボイルドが、相棒だった頃と、その別れを描いた物語。
スラッシュで区切るブツ切りの文章を、疾走感あふれるスピード感とするか、プロットをそのまま書き記した手抜きとみるか。まずそこで評価が分かれると思うが、実験的ということにしておこう。人体実験によって超人的な能力を身につけた者たちの激しい戦闘と、近親相姦、児童虐待などのタブーをとことん突き通していくテーマは前作と変わらないが、戦闘シーンはますます激しさを増し、苦悩も深くなる。少女の成長物語でもあった前作にいくらか救いがあったのに対し、本作はとことんダークサイドに堕ちていく。前作の洗練されたギャンブルシーンがあまりに印象的なので、ちょっと本作が実験的に見えてしまうのはしょうがない、というのが個人的な感想です。

初版2006/11 早川書房/ハヤカワ文庫JA

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