書評<池袋ウエストゲートパーク7>
Gボーイズ冬戦争―池袋ウエストゲートパーク7
石田 衣良
今やテレビでも頻繁に見かける石田衣良の出世作、第7弾。池袋のトラブルを解決する短編の底に流れるテーマは”格差社会”。搾取された弱者が、さらに弱い者を蹴飛ばす事件を主人公たちが解決していく。
個人的には、現代社会の問題を切り取った事件を、なるべく暴力を避けてトラブルを知恵で乗り切り、感動の涙で結ぶというそのスタイルには共感できなかった。池袋のトラブルシューターたる主人公は街の悪ガキたちのバランスを取っているとはいえ、結局は問題を解決するのに暴力団やカラーギャングという組織をバックにしている。”格差社会”を問題にしていながら、その勝ち組の一方の雄である黒社会の組織にトラブルの解決を頼むという矛盾に著者は気づいていないのだろうか。
作品の量産もいいけど、もうちょっと考えた方がいいと思うのだが。
初版2007/04 文藝春秋/ハードカバー
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