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2007.05.25

書評<核爆発災害>

核爆発災害―そのとき何が起こるのか
高田 純
広島に生まれて平和教育を受け、なおかつ後にはミリオタになり、核兵器の知識が人よりは豊富なはずも自分も、なぜ核爆発の直下にあった広島と長崎はさほど日をおくことなく復活し、ビキニ環礁の核実験では今もなお危険地帯が残っているのか、この本を読むまで恥ずかしながら理解できていなかった。究極の兵器、核兵器の使用によって何が起きるのか、我々は案外と正確に知らない。
本書は核爆発災害とはどんなものなのか、徹頭徹尾冷静かつ正確に記している。核爆発によって何が放出され、それが建築物や人体にどのような被害をもたらすのか?恐怖ばかりが先行する放射線だが、その吸収量と人体に対する影響との関係はどんなものか?EMPと呼ばれる電磁波の大量放出は、現代のネットワーク社会にどのような破壊を及ぼすのか?広島とビキニ環礁の研究、あるいは旧ソ連の研究からの引用により、そのデータは裏付けられている。
個人的なことだが、自分も”被爆三世”である。子供のころはそのことで随分と恐怖したことを覚えている。だが、それはイデオロギーによって捻じ曲げられた、情緒的な映画のせいであり、本書を読めば正確なデータによって遺伝的な影響は否定されている。いたずらに恐怖を煽るのではなく、正確な事実を把握してこそ、万が一に備えられる。核兵器の破壊力も大きいが、人間の回復力もまた我々のイメージよりも大きい。何よりも怖いのは”思考停止”になることを本書は教えてくれる。

初版2007/05 中央公論新社/中公新書

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