書評<メディア・バイアス>
メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学
松永 和紀
本書は健康系の情報をメインとして、メディアがいかにバイアスをかけて報道し、メーカー側も一見分かりやすい説明で真実をごまかしているかを明かす。センセーショナルに報道された環境ホルモンや添加物の問題が、いかに偏った見方のまま報道されたか。”有機野菜”なるものが本当に体にいいものなのか。洋食が導入される前の”質素な和食”が本当に日本人の寿命を伸ばしていたのか。本書が提供する事実は、食品メーカー勤めの自分が読んでも目からウロコが落ちる思いがするし、いかに物事を多面的に捉えることが大事かを教えてくれる。
また、本書を読んでマスコミについて個人的に思うこと。
マスコミが抱える問題点の1つが、ニュースをバリューではなくセンセーションで報道する点だと思う。なので”○○は危ない”とか”××は健康にいい”というようなことを、例えば科学者が発表すると、たいして調べもせずに飛びつく。その実験環境や内容の怪しさを気にせずに、だ。
それともう1つが、マスコミの人間が文系であること。いや、文系でも物事を多面的に捉え、少しでもデータを理解しようとする姿勢というべきか。科学関係の記者会見で聞かれる「文系の人間に分かるように説明して」などというのは傲慢な姿勢が、グラフやデータの意味も理解せずに記事やニュース原稿を作ることに繋がる。
これは庶民である我々も常に自覚しなければならない。何にせよ、「飛びつく」のはダメなのだ。
初版2007/04 光文社/光文社新書
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