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書評<虐殺器官>


伊藤 計劃
BARSERGAさん推奨>
現在より少しテクノロジーが少し進んだ近未来。長く続く”テロとの戦い”は、先進各国に個人情報認証とその追跡による管理社会を選択させた。一方で後進国では民族対立や内戦が激化の一途を辿っていた。アメリカ軍はSOCOM(特殊作戦群)の中でもさらに特殊な”暗殺部隊”である情報軍・特殊検索群を立ち上げ、紛争地域に派遣、地域の安定をはかろうとしていた。虐殺がうずまくその派遣先に、常に謎のアメリカ人の影がちらつく。特殊検索群i分隊のシェパードはいくつかの作戦の通して、彼の正体に近づいていく。

読書後の第一印象は”何からも、どこからも逃げていない作品”であることだ。まずアクション。いわゆる不正規戦を描いた作品は限りないが、ここまでその残酷さを追及した作品は珍しいと思う。血と肉の饗宴はまだしも、少年兵をバシバシとヘッドショットする主人公など見たことがない。そして世界観。こういったSF作品では先進的なものがマシンテクノロジーあるいはバイオテクノロジーどちらかに偏りがちだが、この作品ではそれが奇妙にバランスしており、それゆえの気持ち悪さから逃げるどころか、それが重要なプロットとなっている。そのプロットも、大量虐殺を引き起こすその仕掛けと、動機を克明に記し、最後まで投げ出さない。

ただ、”混沌”で物語の幕を引くのは、それまでの流れに対してクラッシックなSFを感じさせて、個人的にはなんとなくスッキリしなかった。というか、SFファンやミリオタにとって魅力的な世界観を構築しているので、それをこの作品1つで終わらせてしまうのはもったいないかと。それほど、作品としては完成度がある。各所で取り上げられるのも納得です。

初版2007/06   早川書房/ハヤカワJコレクション

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