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書評<Op.ローズダスト>

ネット産業の雄、アクトグループの幹部が次々と爆殺される連続テロが起きる。実行犯は過去に自衛隊の非公然組織<ダイス>に所属し、政治の都合で切り捨てられた者たち。彼らは過去の復讐のみならず、日本国民の感情に揺さぶりをかける大規模テロまで計画していた。それを追うのは、公安とダイスのはみ出し者のコンビ。組織の維持と権限拡大しか頭にない官僚組織と過去の因縁が立ちふさがる中、臨海副都心の壊滅を狙ったテロは阻止できるのか。


これは批判ではなく、プロットが「機動警察パトレイバー2」にそっくりだというのが第一印象。争いの耐えない世界の現状を省みないこの国の現状を憂い、変革をはかろうと政・財・官のトップたちが仕掛けた”状況”を、自分たちの目的を果たすべく実行犯たちがテロを拡大していく。それを追うことができるのは厳然たる官僚組織の思考から抜け出ることができたはみ出し者たち。最終的には”60年前の戦後からやり直す再占領”を避けようとするあまり硬直する組織と、善意も悪意も含めた人間の感情の戦い。「機動警察パトレイバー2」から9.11同時多発テロをはさみ10年以上。世界は確かに変わったし、日本の有事と自衛隊に対する考え方も随分変わったが、ミリタリーを得意とするクリエイターが同じプロットに固執するということは、この国は案外と何も変わってないのかも知れない。
ともかく、本のボリュームどおり、アクションだけでなく組織の暗闘や人間の感情がとことん掘り下げられ、読み応えのある作品であることは間違いない。著者が主人公に据える人物が類型化している気がするので、ここは次作に期待しよう。

初版2006/03 文藝春秋/ハードカバー

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