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2007.09.05

書評<スプライトシュピーゲル・オイレンシュピーゲル>

スプライトシュピーゲル 1 (1)
スプライトシュピーゲル 2 (2)
オイレンシュピーゲル 1 (1)
オイレンシュピーゲル 2 (2)
沖方 丁
近未来のオーストリア。かつてウィーンと呼ばれた首都は、国連本部が所在する国際都市ミリオポリスとなっていたが、それゆえ大規模なテロのターゲットとなり、治安は乱れていた。テロリズムあるいは凶悪犯罪に対抗すべく、四肢その他を機械化した”特甲児童”と呼ばれる少女たちが生み出され、激しい戦闘の中心で活躍する。

角川のライトノベル誌にてMSSと呼ばれる部隊に所属する特甲児童たちの物語「スプライト・シュピーゲル」、富士見の同関係誌にてMPBと呼ばれる部隊の特甲児童の物語「オイレン・シュピーゲル」がそれぞれ連載され、同一作家が同一世界を使い、別視点からの物語を描くプロジェクト「シュピーゲル」シリーズ。それぞれの1巻目は物語の中心たるそれぞれの組織とそれぞれの特甲児童たちの”自己紹介”でほぼ終了しているが、2巻目からは1つのテロを巡って、少女たちの視点が交差していく。1つの戦闘が別の視点で描かれたり、2つの物語を重ねることによって明らかになる伏線があったりと、なかなかに楽しませてくれる。
もちろん、そうした実験的な試みだけでなく、物語ももちろん面白い。救いのない過去を持つ少女たちが犯罪に立ち向かう理由も手抜きなしに描かれるし、特甲児童たちそれぞれが持つ装備とスキルの違い(マシンガン・爆発物・剣・格闘・狙撃・ワイヤーアクション)と様々な戦闘を見せてくれる。
著者独特の、記号で単語をつなぐ独特の文章も健在。この人、これでずっと行くのかなあ。

初版2007/01および07  富士見ファンタジア文庫/角川スニーカー文庫

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