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2007.10.04

書評<ローバー、火星を駆ける>


2003年にNASAが実行した<マーズ・エクスプローション・ローバー>計画、すなわちスピリットとオポチュニティと名づけられたローバー(自走式の小型車)を用いた火星探査機を巡る物語である。著者は本計画の主任研究者であり、プロジェクトの立ち上げからローバーによる火星の探査状況に至るまでの詳細を本書にまとめている。
本書は惑星探査計画の実際を教えてくれる。科学者がNASAの惑星探査機器の公募に申し込み、いくつものプロジェクトを立ち上げては消える。幅広いツテを辿ってエンジニアたちに渡りをつけ、ときにはそれまでの公募のライバルと大同団結する。実際に探査機の製作が始まっても資金不足をはじめとして、様々なトラブルの連続である。正直な話、ローバーが火星に降り立ったその感動より、実際にペイロードを打ち上げるまでのその苦労の物語の方が印象に残る。科学者とエンジニアの対立。NASA上層部との交渉。アメリカの”ライトスタッフ”たちを集めてもなお連続するトラブル。打ち上げまでのギリギリのスケジュール。綱渡りとはこのことで、我々の胸をときめかせる惑星探査がNASAでさえ、かくもギリギリのラインに立っているのかと認識を新たにさせられる。
本書は計画の成果であるローバーの活躍ではなく、あくまでも宇宙開発に関わる人々の苦労を描くノンフィクションである。

初版2007/09 早川書房/ハードカバー

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