書評<スプライト・シュピーゲル3/オイレン・シュピーゲル3>
角川スニーカー文庫と富士見ファンタジア文庫、2つのブランドで1つの世界を描く<シュピーゲル・シリーズ>の第3弾。今作は少しだけ物語は交わるものの、別個の物語で進んでいく。/や-を多用する著者のスタイルは今回は控えめ(こちらが慣れたか)。
今回の「スプライト・シュピーゲル」は脇役の接続官の活躍がいい味を出している。自分を天才と名乗り不遜な態度ながら、主人公を支えるその姿と彼の悲劇は、主人公たち同様に涙を誘う。
一方、「オイレン・シュピーゲル」は3つの事件を通して主人公の少女たちの心の動きに深く入り込んでいく。大切なものを巡る、それぞれの少女たちの心の動きに心奪われる。
この3作目でようやく、公安の先兵たるMSS(スプライト)と、憲兵の先兵たるMPB(オレイン)の違いが物語に現われてきたと思う。MSSは刑事捜査に加わり、実力行使に加えて諜報戦も展開するため、敵の真の目標を探る推理アクションの様相。MPBは憲兵隊の一員として最前線に立つため、主人公たちそれぞれが戦う意味を探し、守るべきものを実感することで心の内面を深く描いていくことになる。今更ながら、著者の舞台設定のうまさに唸らされる。
今作はより大きな事件の前振りのようなエピソードで、物語の急速な展開は次作のよう。主人公たちを取り巻く大きな謎にせまっていただきましょう。
初版2007/01 角川スニーカー文庫/富士見ファンタジア文庫
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