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2007.12.22

書評<暗黒水域>


アメリカ海軍にハイペースで原子力潜水艦が配備されつつあった1960年代、同時に民間では深海探査の扉が開きつつあった。アメリカ海軍においてもサルベージなどの任務から深海探査の必要性が検討され、原潜の父、リッコーヴァー提督を中心としてある画期的な原潜の開発がスタートした。後に<NR-1>と呼ばれるそれは、進水する前から苦難の道を進むこととなる。

原子力機関を動力としながら小型で、なおかつ深海の圧力に耐えるべく船殻を持ち、マニュピュレーターで様々な作業が可能な潜水艦<NR-1>の初代乗組員だった著者の手に依るノンフィクション。その<NR-1>による海洋冒険というよりも、様々な技術的困難に立ち向かった技術者や今だ誰も経験したことのないフネに乗り込む著者をはじめとする乗組員たちの記録が主となっている。
そして彼らライトスタッフに、技術的障壁と共に立ちふさがったのがリッコーヴァー提督である。アメリカ海軍内、いや国防において絶大な権力を奮った彼は、その類い希なパーソナリティにより、計画を強烈に推進すると同時に、厳しい要求を関係者に突きつけ、苦しめた。今となっては滑稽ともいえる、たびたび登場する提督のエピソードこそが、本書を読者をグイグイと引き込ませるノンフィクションにしているといえるだろう。
深海探査の知られざる物語と、艦船ファンなら誰もが知るリッコーヴァー提督の知られざるエピソード。どちらをとっても、貴重な物語には違いない。

初版2004/01 文藝春秋/ハードカバー

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Comments

こんばんわ。

読みました。暗黒水域
ちょうど、冷戦期の潜水艦諜報戦の情報が開示された頃なので、
そのつながりかと思ったら
全く違う『これまで似なかったものを開発する』開発そのものの物語で、非常に興味深かったです。

航空機模型にはまったのはこの本を読んだ前後くらいだったので、
後から仕入れる航空機開発関係情報が
どんな意味をもつのか、指針になるものとなりました。

湿度100%でごく限られた電力で動かし続けるテストをクリアしないと、実装できないとか、面白かったです。

もちろん、リッコーヴァー提督もですw
パワフルな変人という伝説を聞いてはいましたが、ここまでとは思わなかったものでw

>Mach0.9さん
「暗黒水域」のタイトルはちょっと不正確で、特殊な潜水艦の開発物語だったのが逆に面白い本ですね。
リッコーヴァー提督みたいなのが上司だったらと考えると、ぞっとしますね。

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