書評<アフリカン・ゲーム・カートリッジズ>
現在の東京と少しだけ異なる世界。何もない空間から思念のみで銃を生み出す”銃使い”の存在が社会を脅かし、”銃使い”の取り締まりを専門とする重武装の警察機関、国家特別銃取締局も暗躍していた。
銃使いによる立てこもり事件に巻き込まれた主人公は、自ら”銃使い”の能力を覚醒させる。そして彼は”銃使い”の組織、アフリカン・ゲーム・カートリッジズと国家特別銃取締局との戦いに巻き込まれていく。
「授業に出る。本屋に行く。本を読む。興奮する。倦怠感に包まれる。授業に出る。倦怠感に包まれる。本屋に行く。」
冒頭の主人公のこのモノローグに泣きそうになった。”授業”を”仕事”に変えれば、オレは今でも・・・と思う。著者は”ミリオタの孤独と妄想”を痛いほど体現する文章を書く。退屈な学校で事件に巻き込まれ、本の世界の中のものであったベレッタを握り、ブレットとカートリッジをまき散らす。その妄想を、裏切りや陰謀を交えた物語にできるところが、一般的なミリオタと著者の才能の違い、なんだろうな。
個人的には強烈な同性愛の性描写はちょっと苦手だが、これはオレがまだまだ保守的な証拠なんだろう。これができないライトノベルでは著者の作品はどんなふうになるのか。未読なので読んでみよう。
初版2007/12 角川書店/角川文庫
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