書評<ライディング・ロケット>
スペースシャトルのミッションスペシャリストとして、国防省の極秘任務を含む3回のフライトに参加した著者の自伝。アストロノーツの自伝は数あれど、本作品は異彩を放っている。もちろん、軌道上から見た宇宙の素晴らしさに関する記述を読めばワクワクするし、スペースシャトルについて、1回のテストもなしに友人打ち上げを実施し、試験機といってもよい不完全な機体を”運送屋”として扱ったことの愚かしさへの指摘は的確だ。
だが、本書の魅力は著者が自ら惑星AD(発達不全)出身者と名乗り、軍上りのパーソナリティをまったく隠していないことにある。ポスドクと呼ばれる大学院出身の宇宙飛行士をインテリのへなちょこと見下し、女性と見れば将軍の秘書でさえセクハラの対象。ジョークといえば、そこにフェミニストがいようと下ネタを全開。PoliticalCorrectness(政治的な正しさ)なんて何のその、とにかく痛快である。その著者がポスドクや女性飛行士たちと共に訓練を積み重ねることにより、彼らに対する見解が変わっていくのもまた、痛快だ。
さらにミッションへの参加を巡る仲間との競争や嫉妬、不透明な人事を行う幹部たちへの本音など、選りすぐりのライトスタッフであるはずの宇宙飛行士の負の感情も隠さない。
アメリカのヒーローたるNASAと宇宙飛行士たちの真の姿を垣間見ることのできる自伝だ。
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