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2008.03.27

書評<「戦争」の心理学>

本書は本来、筆者のいう”致命的武力対決”を任務とする職業、つまり兵士や法執行官を対象とした専門書である。戦争や銃撃戦といった状況で、それらの”戦士”はどのような心理状態となり、それがどんな生理的反応を引き起こすか?多くの事例を引きながら現実を理解し、さらに任務をまっとうするためにはどのような訓練を為すべきかが記されている。
致命的武力対決において、大小の失禁は珍しいことではないし恥ずべきことでもない。それを知っているだけでも”戦士”としての心構えに大きく影響してくる。このような簡単な事例から始まり、戦闘における心拍数の分析、様々な状況に対しての人間の脳部位における反射の違いなど、極限状況の人間の心理と行動を詳細に分析する。それに対し、常に冷静に状況に対処するにはどのような訓練を実施すべきかが導かれる。著者の前作「戦争における”人殺し”の心理学」とダブる部分も多いが、本書が前作から生まれた”授業用テキスト”だと思うとちょうどよい。
また意外な発見もある。訓練はリアルを追求するのが概ね良いとされているが、ペイント弾に当たったからといって、”死んだふり”などせず訓練を続行すべきだ、と本書にはある。リアルを追求するならそこで止まるべきだと思うが、訓練でそうすると実戦で撃たれたときに致命的な負傷でなくても、反射的に止まってしまうことがしまうことがままあるそうだ。なるほど、と思わせる事例だ。
子供に対するゲームや映画の影響など、議論の分かれるところもある。だが、致命的武力対決においての人間の心理と行動について知るには、最適な本である。

初版2008/03 二見書房/ハードカバー

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Comments

>大小の失禁は恥ずべきことでもない。
>ペイント弾に当たってもそのまま動く
なるほど~、
実戦を経験した人だからこそ分かる事実ですね。
普通は気づかないそういうことが現場ではあり得る。
そういうことをちゃんと知ってこう、という意識だけは
保ちたいと思います。

熊が里に下りてきた時、
なぜ麻酔銃を使わなかったのか、
なぜ檻に入れて山に戻してやらなかったのか、
などと現実も知らずに言うコメンテーターを見ると、
じゃ、おめえがやってみろ、と言いたくなりますが、
これも現場の理解が足らない例ですよね。

>みに・ミーさん
一言に”実戦を想定する”といっても具体的にどうすべきか?自分のようなミリオタではなく、陸自の幹部なんかが読むべき本ですね。

>現実も知らずにいうコメンテーター
それぞれの専門分野の人が見ると、もっとも腹立たしいのがこの人たちなんでしょうね。

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